前回の記事では、CIOであるChristineが、予算を超過し、期間も延ばさざるを得なくなったSAPの拡張プロジェクトにどう対処すべきか確信が持てないまま、四半期ごとに開かれる運営委員会に向かうところまでを描写した。委員会の場に向かう途中で、コンサルタントであるMartinに出くわした彼女は、自らのキャリアを潰すことなく問題に対処する方法について良いアドバイスをもらえないものかと考えた。
「とにかくMartin、これで基本的な話は分かってもらえたと思うんだけど、私はどうすべきだと思う?」
「難しい状況だね、Christine。でもそれはプロジェクトがうまく行っていないからというよりも(うまく行っていないというのも良いこととは言えないけれど)、君がプロジェクトに対して個人的に入れ込みすぎているからなんだよ。君が悩んでいるのはよく分かる。だけど、キャリアが台無しになると決まったわけじゃないよ。政治的な根回しができていなくても、できることはあるんだから」
「どう考えても、部下の誰かに責任があるとは思えないわ。非難されるべきは私なのよ。もしくはベンダー。彼らは、あのモジュール群がまだ使用に耐えられる状態にないと分かっていながら販売したんだもの」
「誰が悪かったのかを追求するなんてことは、少なくとも今やるべきことじゃあない。それは誤ったレベルでものごとに対処しようとしている証だ。自分の過ちを後悔している?罪悪感にさいなまれている?そんな考えは捨て去るべきだよ。誰が悪かったのかを追求することは、その矛先を部下に向けるか、ベンダーに向けるか、あるいは自分自身に向けるかに関係なく、的外れの行為であって、まったく非生産的だ。誰かを責めるというのは、僕が勧める対処とはまったく関係のない行為だね」
「じゃあ、どうすれば良いと言うの?どんな風に悪いニュースを報告すべきかしら?どこから始めるべきなの?」
「まず最初に言っておきたいのは、この会議が『悪いニュース』を報告するための場ではないということだ。悪いニュースを報告するということと、問題に光を当てるということは区別して考えるべきだよ。そして、そこを出発点にするわけだ。委員会に対して、プロジェクトは期待通りに進んでおらず、重大な懸念があるということを伝えるんだ。懸念の内容とその原因について概説するわけさ。ただし、上級幹部は見込みのある解決策の提示もなしに問題が報告されることを良しとしないということを念頭に置いておく必要がある。だから、問題となっている状況を打開するための対策を大至急準備するということを伝えなければいけない。こういったことを手短に、かつ正直に話し、対策を準備できる日付けを明言しておく必要もある」