過去18カ月の間にIT関係のカンファレンスやイベントに参加した読者の方であれば、本記事のタイトルと同じような話を、ITリーダーやテクノロジベンダーから何度も耳にしたことだろう。一言で述べると、IT部門における予算の約70%が既存インフラの保守に費やされており、新たなイノベーションに使われるのは30%に過ぎないという話である。
このことは、ボストンで開催された「EMC World 2010」でも大きな話題となり、ほとんどの講演者が言及していた。そしてEMCの最高経営責任者(CEO)であるJoe Tucci氏も、現地時間5月10日に行った基調講演の冒頭で、企業をクラウドに向かわせている最大の要因としてこの件を採り上げていた(下記のスライドを参照)。
また、Hewlett-Packard(HP)が11日の午前に「Break IT Innovation Gridlock」(ITにおけるイノベーションの停滞を打破する)という新たなプログラムを発表した際にも、同様のことを述べている。
以下は、HP Enterprise Businessの販売、マーケティング、戦略を担当するエクゼクティブバイスプレジデントであるThomas E. Hogan氏が語った内容である。
変化の絶えない現代において、企業にとってイノベーションの停滞を打破できるかどうかが、市場をリードする存在となるか、それとも競合他社の後塵を拝することになるかという分かれ道になることもあるのです。HPを選択することにより、最高情報責任者(CIO)の方々は、運用に回されていたコストを、新たなイノベーションを生み出すプロジェクトに振り向けられるようになります。
さらに悪いことに、IT予算の推定30%がイノベーションに使われているといっても、Tucci氏が今回のEMC Worldにおけるプレゼンテーションで指摘したように、この値は実際にはかなりに高めとなっている。というのも一般的に言って、この30%の多くが、レガシーコードや旧式のシステムの重荷に対処するための新たなテクノロジに投資されているためである。
EMCやHP、そしてCIOたちは皆、こういった状況によって破壊的な結果がもたらされると考えている。旧式のテクノロジを維持するという重荷を背負わされたエンタープライズは、このままではITにかかるコストを浪費させられ、さらには柔軟性をも失うことになるだろう。なぜか?Tucci氏の言葉を借りれば、「われわれは、さらなる情報爆発の時代を迎えようとしている」からだということになる。
Tucci氏が引用した調査(この調査はEMCの依頼で行われた)によると、今後、より多くのシステムが既存データのデジタルフォーマット化を推進するようになるため、2020年におけるデジタルデータのサイズは、2009年に比べると44倍にまで増加するという(Tucci氏による下記のスライドを参照)。
要するに、管理する必要のあるデータがこういったペースで増加することにより、IT部門には機敏かつ柔軟な対応が要求されるようになるわけである。こういった要求に応えられなかった場合、IT部門は既存システムの保守に追われて身動きがとれなくなってしまうだろう。EMCとHPが提唱しているアプローチはそれぞれ異なっているものの、状況が悪化する前に手を打とうとしているのは同じ問題、すなわちITにかかるコストの70%が保守関連であるという現状なのである。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ