日本IBMは8月24日、基幹業務にLinuxを活用しやすくする試みとして、Linuxとオープンソースソフトウェア(OSS)を動作させる目的に特化してソフトウェアやライセンスなどをパッケージングしたメインフレーム製品「IBM LinuxONE」(写真1)を発表した。ハードウェアは既存のメインフレーム「IBM z Systems」の2機種と同一。新たに従量課金を選択できるようにしている。従量課金選択時の価格は、最小構成で月額98万円から。
以前から日本IBMは、メインフレームのLinux対応に注力してきた。メインフレーム上では、専用OSの「z/OS」(以前のOS/390)だけでなく、Linux(Red HatとSUSE)が動作する。z/OSのライセンスは必須ではなく、純粋にLinuxサーバとして導入できる。主に、大量の仮想サーバを1台のメインフレームに集約し、Linuxサーバのクラウド基盤として使うことを想定している。
写真1:LinuxONE Emperorの外観(z13とzEC12とは色違い)
ただし、「基幹業務の用途ではLinuxの実績はまだ少ない」と、日本IBMでハイエンド・システム事業部長を務める朝海孝氏は指摘する。この状況を打破するために、今回LinuxONEを投入した。LinuxONEはメインフレームの新製品だが、基幹業務へのLinuxの活用を促進する試みとして、OSSへの取り組みなどの周辺要素を包含した戦略でもある。
IBM自身がOSSをポーティング、配布
LinuxONEでは、ハードウェアは既存のメインフレームそのままに、OSSへの対応を強化した。具体的には、IBM自らOSSのポーティング(移植)や配布などに関わることで、メインフレーム上で動作するOSSの種類を増やした(図1)。利用できるLinuxの種類も増やし、Red HatとSUSEに加えてUbuntsuも使えるようにした。さらに、ライセンス面で従量課金を選べるようにした。
図1:IBM自らOSSをポーティング、配布してメインフレーム上で動作、サポートするOSSを増やす
これまで、OSSをメインフレームで動作させる場合、OSSのディストリビューターがポーティングしてバイナリを配布するのを待つか、あるいは企業が自分でポーティングしてコンパイルして使うしかなかった。これに対してLinuxONEでは、IBMの専任チーム「IBMオープン・ソース エコシステムチーム」がこれらの作業を実施し、動作テストを経てから配布する。
日本IBM 理事 IBMシステムズ・ハードウエア事業本部 ハイエンド・システム事業部長 朝海孝氏
LinuxONEは、仮想サーバ350~8000台の稼働を想定するハイエンドモデル「LinuxONE Emperor」と、仮想サーバ40~600台に向くミッドレンジモデル「LinuxONE Rockhopper」の2機種で構成する。Emperorのハードウェアは既存のz13およびzEC12と同等で、Rockhopperのハードウェアは既存のzBC12と同等だ。LinuxONEで利用可能なOSSはすべて既存のメインフレームでもそのまま利用できる。
朝海氏は、メインフレームをLinuxサーバのプラットフォームにメインフレームを使うメリットを3つ挙げる。1つは、1台で大量の仮想サーバを集約できるので、複数のサーバで構成するシステム全体を1台で管理できること。1つは、スケールアウトとスケールアップ両方の拡張性の高さ。1つは、ハードウェア暗号化やDR(災害復旧)機能、障害予兆機能などのセキュリティや可用性の高さだ。