ウチダスペクトラム主催のプライベートセミナー「ナレッジマネジメント革新フォーラム2007 〜KM2.0へのパラダイムシフト〜」のセッション、ウチダスペクトラム発行のホワイトペーパー「今求められる知識管理革新〜KM2.0へのパラダイムシフト〜」に作成協力したリアルコムのプリンシパルを務める砂金信一郎氏が登壇。同社が長年取り組んできたナレッジマネジメント(KM)のコンサルタント経験から、現在のKMを取り巻く環境変化や、エンタープライズ2.0へとつながる道筋について語った。
「KM導入のためのKM」は失敗する典型

「アクティビティログとメタデータ、アイデンティティはひとつの共通基盤で統合管理すべき」と語る砂金氏
リアルコム株式会社
マーケットディベロプメントグループ
プリンシパル
砂金 信一郎氏
リアルコムは、2000年4月の創業以来、情報共有とナレッジマネジメント(KM)を一貫して強みとしてきた。KM導入に向けた独自の方法論を持ち、ソフトウェアとコンサルティングをハイブリッドで提供するために、社員の半数はエンジニア、残りの半数はコンサル出身者で占められているという。
「当社がこれまで実施してきたKMのコンサルティングは、KM導入の詳細設計をするものではない。課題を洗い出して整理し、何のためのKMなのかという点を基点にプロジェクトを進める」と語るのは、同社でプリンシパルを務める砂金(いさご)信一郎氏だ。KMは営業力強化や技術の継承、不具合防止などのビジネスと結びつけて成果を出してきた。同社は、その長いKMコンサルの経験から、情報システム部主導による「KM導入のためのKM」は失敗する典型だと注意を促す。
KMを継続するのが大変なのは確か
そこで砂金氏は、「課題解決の目的はさまざまに存在するように、KMのアプローチも異なる。それを明確化することが効果の可視化にもつながる」と述べる。施策とその対象を明確にすることで、KMの貢献領域はどこにあるのかをはっきりさせ、現場やマネジメントを巻き込んだディスカッションにより問題の洗い出しと深堀を行うことが重要と話す。
しかし、その作業は結構泥臭いものだという。ストップウォッチを使ったアクティビティ調査やアンケート調査など、地道に対象のファクトを集め、ワークスタイルに潜む課題を明らかにするといった作業を繰り返し続けながらKM活用への解を出していく。
中でも大きな要素は、情報共有の枠組みを作ることである。それには、情報の流れを意識しながら、ファクトに基づく共有の「場」を設計していくことが必要となる。それを同氏は「コミュニティ」と呼んでいるが、営業や研究開発などの業種別、支店や支社などのロケーション別、入社年度別などで、さまざまに情報共有の場をデザインしていく。
しかし、そのせっかくのコミュニティも、半年や1年も経つと、活用が形骸化する傾向になる。その原因は、業務の中に情報共有のプロセス化やルール化がされていないために起こるという。そのため、施策が一過性にならないよう、随時、月次、3ヶ月ごとのメンテナンスルールを組むなど、運用まで落とし込んで定着されることが重要となる。
「効果ない、成果が見えにくいといわれるKMだが、実際にここまでやって成功している企業も多い。しかし、これを継続するのは非常に大変なことは確か」(砂金氏)
KMコンサルから学んだ3つの真実
このようなKM経験から、同社は何を学んだのか。それは大きく3つあるという。1つは、KMは1.0でも一定の効果は見られたということ。KMを、売り上げアップやコスト削減に結び付けている企業も多い。その過程でナレッジコミュニティ(注1)やKnow Who(注2)のデータベースをどのように作っていくべきかなどのノウハウは蓄積できたという。
2つ目は、残すべき意味のあるナレッジを、日常業務で自然に蓄積する非構造化データから切り分けることが困難だという事実。メールやファイルサーバから重要なナレッジだけ抽出して再登録することは負担が大きい。そのため、とりあえず全部溜めようという結論になりがちになるという。
さらに3つ目は、個別業務の課題に特化したKMシステムの存在が認められにくい時代になってきたこと。最近ではEA(Enterprise Architecture)やガバナンスなどから、全社共通基盤に統合できるものでなければ認めないという傾向が一般化してきたためだと説明する。
注1 ナレッジコミュニティ:
会員同士が、各自の専門知識を生かしてお互いの疑問や質問に答えあうコミュニティ。良質な回答には、お礼のポイントやランキングなどでその貢献に報いる。
注2 Know Who(ノウフー):
「誰が何を知っているのか」「専門家やエキスパートがどこにいるのか」といったことを特定する仕組み。知識やノウハウを持つ人と必要とする人とを結び知識の有効活用を図る。