小さな改善を積み重ねたリコーのマルチチャネル戦略(前編)

小林正宗(月刊ソリューションIT編集部) 2005年05月17日 13時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

リコーは2000年からマルチチャネルCRMを実践してきた。 その一端を担うのが、One to OneのWebサイト「NetRICOH」だ。 ダイレクトマーケティングセンター所長の花井氏は、全社体制の改革と小さな改善の積み重ねが、成功の秘訣だという。

 Part.1でも述べたように(ZDNet Japan編集部注:ZDNet JapanではPart.1は掲載していません)、顧客満足度を向上させる1つのポイントは「マルチチャネル」だ。従来は個別に構築されていたSFA(Sales Force Automation)やコールセンター、Webサイト等のチャネルを連携。顧客ごとに管理することが求められている。  リコーは90年代後半にその必要性に気づき、2000年からマルチチャネルでのCRMを実践している。散在していた顧客DBを統合し、SFAの導入に合わせて会社全体の業務プロセスも見直した。また、2004年6月には、コールセンターの統合プロジェクトを終了。顧客と強く結びついている。

 以下では、マルチチャネル型CRMの中核を担うポータルサイト「NetRICOH」が誕生した背景と仕組みを紹介する。

生産性を向上し 顧客満足度を上げる取り組み

 複写機を取り巻くビジネスは、訪問営業が主流だ。90年代以前、営業マンは企業を訪問して複写機のスペックを説明し、キメ細かなアフターサービスをすることで、顧客との結びつきを強めていた。シェアや売上の拡大を狙うとなると、多数の営業マンによる、いわば「人海戦術」が効果的だ。結果として複写機を扱うメーカーは、各都道府県に営業所や支店を設置。リコーも、1万人以上の販売戦力を抱える巨大グループとなっていった。

 だが90年代後半になると、業界全体の伸長率が鈍化してきた。顧客からの要望に応じた人海戦術では、売上が頭打ちになってきた。それは従前のビジネスモデルの終焉を意味していた。

 リコーは、主力分野である複写機やIT、OA業界等で生き残るには、「顧客満足の追求」と「無駄の排除」、「生産性向上」を目指す必要があると判断。以下の5つの改革に取り組むことになった。

  • SCM構造改革
  • マネジメントの変革
  • 環境経営の推進
  • グローバル経営の強化
  • 販売体制の変革

5年後の営業マンには 約6倍の生産性が必要

 顧客満足度の向上策を策定するに際して、リコーは顧客ニーズの変化を調査した(図1参照)。このうち?提案に対するニーズの変化と、?チャネルに対するニーズの変化が、以降の販売体制を大きく見直すヒントとなった。

図1 顧客ニーズの変化

? 提案に対するニーズの変化

 従来から、提案型営業の必要性が声高に叫ばれていた。だが実際は、機器のスペックの説明に終始していたケースが多かったという。複写機は単体で動作し、プリンターも1台のPCだけとつながっていることが多かったからだ。

 90年代後半にはデジタル化が進み、OA機器が急速にネットワークでつながっていった。結果としてオフィス環境は複雑化し、顧客は営業マンに、より高度なソリューション提案を望むようになってきた。

 だが、ソリューション型ビジネスへの移行は容易ではない。顧客企業のITの現状を調査し、担当者にヒアリングする必要がある。PCとの相性や、コストダウンするための工夫、業務効率化の提案も求められる。リコーでは、ソリューション型ビジネスへと移行した場合、営業マンには従来の2.3倍の工数が必要になると予測していた。

 さらに、少子化や営業職の人気低下などから、5年後には営業マンが約40%減少するという試算があった。当時掲げられていた、「5年後に事業規模を1.5倍にする」という経営目標を達成するには、単純計算で、営業マンに6倍の生産性を求めることになる(図2参照)。

図2 営業生産性向上の必要性

 リコー販売事業本部CRMセンターダイレクトマーケティングセンターの花井厚所長は「6倍というのは大げさかもしれませんが、仮に2〜3倍の生産性が必要だったとしても、もはや営業マンに『気合と根性だけで乗り切れ』と言える目標ではありません。各業務プロセスや販売体制を、抜本的に見直す必要があったのです」と振り返る。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連キーワード
経営

関連ホワイトペーパー

SpecialPR