たった2名のメンバーで上流工程を指揮、ベンダとの強力なタッグが成功を後押し

小林 正宗(月刊ソリューションIT編集部) 2005年06月15日 17時17分

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センター型集中DB構築/すかいらーく

すかいらーくは、全国に約3000店舗を抱える最大手の外食チェーンの1つだ。 10万人以上の従業員を対象にするシステムも自ずと巨大になる。 全店舗のネットワークを光回線化する巨大プロジェクトに 当初参加したのは、たったの2名。 情報システム担当リーダーの三瓶隆美氏は、 プロジェクトを成功させるには、少数の精鋭が上流工程を指揮し、 SIベンダとの強力なパートナーシップが不可欠だと言う。

 情報システム部門の形態が、ここ数年で急激に様変わりしてきた。メインフレームの全盛期、100名近い情報システム部員を抱える企業は珍しくなかった。だが近年、部門を情報システム子会社として切り出したり、保守・運用業務をSIベンダにアウトソースするケースが増えた。結果、IT企画を担当する数名だけが本社に残り、グループ会社全体のIT戦略を支えるのが一般的となった。

 今や、大規模プロジェクトと言えども、システム利用企業から数十名が参加することは珍しい。全国に名だたる大企業でも、情報システム部員が数名しかいない場合が多いからだ。そこには、少数精鋭でプロジェクトを回すノウハウが必須だ。

すかいらーく 情報システム担当リーダーの三瓶隆美氏

 中華レストラン「バーミヤン」やファミリーレストラン「ガスト」等を運営するすかいらーくも、情報システム担当者は数名だ。期間が1年9カ月、数十億円にも及ぶ大規模プロジェクトにもかかわらず、開始当初に本部から参加したのはわずか2名だった。彼らが終始プロジェクトを牽引し、成功へと導いた。

 すかいらーく情報システム担当リーダーの三瓶隆美氏は、「システムと業務を本当に理解しているメンバーが2人いれば充分です。プロジェクトに大人数は必要ありません」と言い切る。

 以下では、要件定義や詳細設計等の上流工程を2人で推し進めた、すかいらーくのプロジェクトを紹介する。

コスト低減のため
ハードの再利用を決断

 すかいらーくは、中期経営計画の達成に向け、これまで5年ごとに全社の情報システムを見直してきた。

 「2009年までにグループ売上高1兆円を目指す」という目標を達成するには、ITにまつわるコストを極力減らすとともに、従業員を支援するITの仕組みが不可欠だ。ゆくゆくは、リアルタイムの在庫管理や、より高度なマーチャンダイジングを実行する必要がある。それにはまず、ITインフラを抜本的に見直す必要があった。そこで目をつけたのが、光回線の導入だった。

 それまですかいらーくは、店舗系システムのDBが数カ所に分散されており、それらを結ぶネットワークはISDNだった。これを、光回線を導入してセンター集中型のDBに再構築するものだ。

 センターDBシステムにすると、店舗や工場はシン・クライアントとなるため、各拠点のハードにかかるランニングコストを下げられる。また、ハードの故障による修理費用が不要な点も大きなメリットだ。すかいらーくのように、全国に約3000店舗を抱える巨大グループになると、ハードの修理費だけで月間数百万円もかかってしまう。

 このシステムが実現すれば、ネットワークコストは上がるものの、5年後には数十億円のコスト削減が可能だと予測していた。1店舗あたりのITコストを、34%削減できる計算だ。また光回線は、充分なパフォーマンスが必要なWeb分析系システムなどの基盤としても申し分ない。

 まず三瓶氏は、これらの提案書をまとめ、2002年10月頃に経営会議に提出した。「初回の会議では、見事にはねられてしまいました。費用がかかりすぎるというのが主な理由でした」(三瓶氏)と当時振り返る。

 すかいらーくでは、新たなシステムを導入する際、それまで全店舗のハードを一斉に入れ替えていた。数カ月しかハードを利用していない新規店舗も対象になる。そのため、5年ごとのシステム改変時には、リース解約による特別損失が数十億円規模で計上されていた。三瓶氏は、この問題を改善するよう、経営層から指摘されたのだ。

 そこで三瓶氏は、99年以降に新規出店した約800店舗については、ハードをそのまま利用しながらWebシステムを構築する「AP改造店舗案」を経営会議に提出。数回にわたり議論を重ねた後、2003年3月に正式にプロジェクトとして了承された。

 三瓶氏は「コスト削減につながるプロジェクトとは言え、数十億にも及ぶので、何度も経営会議で揉む必要はありました。すんなりと通らないことは、想定内です。経営層の思いとかけ離れたシステムにはしたくなかったので、宿題をもらい、それを解決する案を出し…というプロセスとして、数回繰り返す必要があると思っていました」と打ち明ける。

定例会議とパートナー選びが
プロジェクトの成否を分ける

 プロジェクトの狙いは以下の3点だ。

  1. 全社トータルコストの削減
  2. IP内線電話とeラーニングの導入
  3. セキュリティの高いグループネットワークの構築

 プロジェクトの実質的なリーダーは三瓶氏が務めた。もう1人、以前店舗系システムを開発していたメンバーを、専任担当としてアサインした。DB設計はビック東海、店舗系システムはNECインフロンティア、ネットワークはNTT東日本が担当。2003年3月にプロジェクトをキックオフした(図1参照)。

図1 プロジェクトのスケジュール

 2名というのは、いわば最低限の人数だ。だが同社では、このプロジェクトに関わらず、大量のリソースを投入することは難しかった。三瓶氏は、少人数でプロジェクトを回すため、具体的に3つの点に配慮したという。

 1つは、週に1度、欠かさず定例会議を開くことだ。プロジェクトの課題や進捗をこまめに確認すれば、火種を未然にもみ消すことができる。これらをベンダ任せにしてしまうと、要求どおりのシステムにならない可能性もある。

 もう1つはパートナー企業の選定。すかいらーくのRFP(要求定義書)を理解し、条件を受け入れてくれるSIベンダを選ばなければならない。そこでは、ベンダ側のプロジェクトリーダーとの相性も重要になる。どれだけ優れた提案をするパートナーでも、リーダーとコミュニケーションできなければ、思い通りのシステムにはならない。

 3点目は、システムのブラックボックス化を防ぐことだ。通常、プロジェクトに数社のSIベンダを参加させる場合、コンサルタントを介入させたり、プライムのベンダを設定し、SIベンダ側の取りまとめを頼むケースは多い。だが三瓶氏は、システムのコストや効果などをつぶさに把握するため、直接3社と意思疎通を図ることにした。

 確かに、なかなかSIベンダ3社の本音を引き出せず苦労した点はあった。だが結果的には、システム単体のコストや効果などを逐一把握し、システム構築のノウハウを蓄積できたと言う。

 「別段、変わったことをしていたわけではありません。すかいらーくの一員として頑張ってくれるベンダを選び、言うべきところをきちんと言ったまでです。これらを押さえると、それほど的外れなシステムにはならないはずです」(三瓶氏)と言うのだ。

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