万川集海 第6回:箱のなかの欠けた茶碗--データの中身の正しさに関するお話

石本健志(日本IBM) 2007年02月22日 08時00分

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データは蔵に収められている

 ハードディスクやテープ装置などのITシステムで用いられる外部記憶装置を総称して、英語では「Storage(ストレージ)」と呼んでいる。ストレージという語を一般的な英和辞書で調べてみると「貯蔵、保管」とある。コンピュータ用語に馴染みがなくても、住宅の間取り図にでてくる「4LDK+S」のSはストレージの頭文字であると言えば思い当たるかもしれない。身近には「納戸」や「物置」、大きなものになると「蔵」や「倉庫」がこれにあたる。さて、外部記憶装置とは、どのような「倉庫」なのだろうか。

いにしえの都の物語

---舞台はいにしえの都。ここは当地を治める名家のお屋敷にある蔵である。蔵の中には人の背丈を越える大きな棚が整然と並べられ、棚の上には近隣諸国から献上された掛け軸や器など先祖伝来の宝物や、殿が幼少のみぎりにお使いになった木製の馬など、記念の品々が箱に収められている。私の一族は代々この蔵の番を仰せつかり、蔵の入り口まで運ばれてきた箱を「×番の棚の、上から×番目の棚板に」という指示に従ってきちんとお預かりし、その場所へ間違いなく収めるのが仕事である。蔵の棚にはほこりをかぶったまま、何年も忘れ去られたように保管されている箱もあれば、頻繁に入出庫を命ぜられる箱もある。時折お傍衆が蔵にやってきて「×番の棚の、上から×番目の棚板から品物を取り出すように」と主の命令を伝えるので、その場所より品物が入った箱を取り出してお渡しするのも私の役目である……

 ディスクなどコンピュータの外部記憶装置が果たす役割は、この話の倉庫番に例えることができる。大切な品々(データ)を永続的に保管し、後日その品物(データ)が使われるときに取り出すという役割だ。ブラックホールのように品物を飲み込んでしまって取り出すことができない倉庫や、棚板がぐらついて品物が保管中に壊れてしまうような倉庫では困るのである。

 品物を「元の姿のまま」、そして「いつでも自由に」に出し入れできるということは、話に登場する倉庫のみならず外部記憶装置にも当てはまる必須の要件だ。このため、外部記憶装置にはデータの中身を保護するためにRAID技術などの数々の工夫がなされている。また、データバックアップ作業や遠隔地へのデータコピー作業は、絵画を模写して別の場所に保管しておくことに相当するかもしれない。

 では、この蔵に置かれている箱は安全なのだろうか。お話の世界に戻ってみよう。

箱の中身が壊れていた!

---ある時、執事が品物を取りにきたのでいつものように手渡すと、やがて執事が血相を変えて戻ってきた。箱の中の茶碗が欠けていたのだ。私は箱の中身を見たことがないので、何が入っていたのかは存じ上げぬが、盗人に入られぬよう戸締りを気づかい、夜回りも行い、地震や火災などの災害への備えも万全であった。もちろん手を滑らせて箱を落としたことなど一度もない。さてどうしたことであろうか……

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