また、法規制へのコンプライアンスという問題も関係してくる。ネットワーク上のデータをセキュアにする方法が業界や政府の要求として定められている業種では、ネットワークを切り離しておくことでセキュリティを強化できるため、コンプライアンスのレベルを向上させることができる。
ネットワークを音声用とデータ用に分けておく理由としては、帯域幅の問題もある。既存のネットワークではVoIPに必要な帯域幅を確保できない場合、VoIP用に別途ネットワークを用意することが1つのソリューションとなる。これにより、QoSのコントロールが容易になるとともに、他のアプリケーションが優先されてVoIPユーザーが迷惑するかもしれないということを心配しなくてもよくなる。実際、Ciscoやその他のベンダーは、VoIPネットワークをセキュアなものとするためのベストプラクティスとして、VLANを用いてVoIPとデータを切り離したネットワークを構築することを推奨している。
しかし、物理的に切り離すかVLANを用いて切り離すかにかかわらず、別々のネットワークにするにはコストがかかるし、音声トラフィックをセキュアにする方法は暗号化も含めて他にも存在する。また、ネットワークを分離することで、双方に無駄な帯域幅が生じる可能性もある。
まとめ
コンバージェンスするべきか、それともせざるべきか、それが問題だ。しかし残念ながら答えはそれほど明快ではない。コンバージェンスのメリットは多いうえ、時代の波として、特に予算の厳しい企業においてはコンバージェンスに向かうべきであるように見受けられる。
しかし、音声とデータ通信を切り離しておくことで、それぞれのセキュリティを強化することができる。また、VoIPを導入するためには既存ネットワークの根本からの再設計が必要となる場合、切り離しておく方が、少なくとも短期的には費用対効果が高いのである。
IT担当者がVoIPテクノロジを扱うための適切な訓練を受けている場合には、ネットワークを1つにしておく方が管理やトラブル対応が容易になる。しかし、ネットワークを1つにまとめると問題がより複雑になり、コンバージェンスのメリットを享受するまでに長い学習期間が必要となる可能性もある。
ITにおける多くの問題と同様に、この問題に対する答えはケースバイケースである。答えは既存のネットワークインフラや必要なセキュリティ、予算、担当者など、多くの要因に左右される。決断を下す前に、ネットワークに加えて、データと音声の双方に関して会社の抱えている特定のニーズや、今後のニーズの予測について事前評価を実施することが欠かせないのである。