「異花受粉」が鍵--TeslaとSpaceXのマスクCEOが語るイノベーション - (page 2)

末岡洋子

2014-01-21 07:30

 時間がかかるからこそ「早く開始しなければならない」と言う。人々に少しでも早く電気自動車を受け入れてもらうために必要と思ったことは「電気自動車を魅力的にすること。そのために、ものすごい努力と作業を重ねた。このミッションを信じているチームが社内にあり、これがTeslaが素晴らしい車になった理由」とMusk氏はチームを持ち上げた。Musk氏の信念が正しかったことは、現在大手自動車メーカーがどこも電気自動車戦略を持つことが実証している。

 Teslaは人々に愛され、望まれる自動車になった。当初の予想では「週400台製造」だったというが、現在は50%増やして週600台ペースで生産しているという。「お金持ちでTeslaを持っていない人、欲しがっていない人はいないんじゃないか」「多くの人が、将来自動車業界をリードするのはElon Muskだと思っている」とKirtpatrick氏が言うとMusk氏は照れ笑いを浮かべる。

 なお、Googleが発表した2013年のZeitgeistで、「Tesla」は自動車部門で見事1位に輝いた。同社にとって最大市場というノルウェーでは8月、高級車のModel SがVolkswagenの大衆車「Golf」を超えてベストセラーカーとなった。

 Teslaは高度な車載コンピュータも評価されている。常時接続により安全な走行に関するデータを収集して改善につなげているというが、データ分析に話が及ぶとMusk氏は、「喜びを感じる製品はそんなに多くない。(Teslaを)人々の期待を上回る、ハッピーに感じてもらう製品にしたい」と願いを語り、自動車から収集したデータを活用して継続的に改善を図っていることも明かした。

成功は自分ではなくチームの力、イノベーションは「トライあるのみ」

イノベーションは「トライあるのみ」と語ったMusk氏
イノベーションは「トライあるのみ」と語ったMusk氏

 Kirtpatrick氏は「大きな賛辞を送りたい」とMusk氏への賞賛を惜しまなかったが、Musk氏がこのようにさまざまな人から尊敬されている理由は、同氏の成功がPayPalとTeslaにとどまらないからだ。そう、Musk氏は宇宙開発SpaceXの創業者兼CEOという顔も持つ。

 離陸後に発射台に戻って着陸する「Grasshopper」の映像の後、「政府すら成功できないことをやってのけた。技術の潜在性に対する信頼が根源にあるように見える」とKirtpatrick氏。

 「自身がエンジニアであり技術を理解していることが成功の要因だと思うか?」とMusk氏に尋ねた。Musk氏はしばし考えた後、「どんな説明が適しているのか考えているんだけど……」と再度うつむく。そして口を開いて「実現しなければならないと信じていることがいくつかある」と述べた。「素晴らしい人々を説得して、一緒にこれらの問題を解決していくことに成功したんだと思う」と自分への賞賛をチームに向けた後、次のように続けた。

 「才能ある人々を集めてチームを作り、課題を中心にしてチームを結束させる。各メンバーが自分が得意とすることをいかして作業できるように支援できれば、企業は素晴らしいことを到達できると思う」――Musk氏がゆっくりと言い終えると、会場からは大きな拍手が起こった。

 イノベーションについて話が及んだとき、「他の人を見てみんなもっと一生懸命に挑戦すればいいのにと思うことはあるか?」というモデレーターの質問に軽くうなずきながら、「みんな、自分が思っているよりも自分を制限しているんじゃないかな」とMusk氏。

 「一番大切なことは、とにかくトライすることじゃないかな。例えば……昨日トライした? 今日はトライしたかな?」と続けた。控えめに自分の考えを話すMusk氏の表情からは、威圧的なものや優越感のようなものはみじんも感じられなかった。

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