2019年中にIoTによって大きく変わる4つの業界

Bob Violino (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2019-05-03 08:00

 今年は、モノのインターネット(IoT)が大きく普及する年になるかもしれない。多くの企業は、無数の情報源から膨大なデータを収集できるようになることを期待して、ネットワークに繋がったデバイスを導入するとともに、ネットワークや、アナリティクスの利用能力を強化している。

 デジタルビジネスを専門とするコンサルティング企業Nerderyの戦略担当ディレクターTaqee Khaled氏は、2019年には引き続き、エンタープライズIoTの試験的な取り組みや、その後の本格的な導入が急速に進展すると述べている。

 「この動きが加速している理由の一端は、製造技術の進歩によって、中核技術の処理速度の向上、物理的な大きさの縮小、コスト低下などが起こっていることにある」とKhaled氏は言う。「その一方で、IoTが企業の柱となる事業にもたらす価値を理解する経営陣が増えたことで、導入を妨げる障害も減った」

 IoTがもっとも効果を発揮するのは、IoTと人工知能(AI)が交わる分野だろう。

 Khaled氏は「よりスマートで、学習していくシステムでデータを分析することで、従来よりも簡単に、アクセスしやすい形で有益な情報が生み出されるようになる。最終的にはそれが、十分な情報に基づいたビジネスの意思決定や、従業員の体験の改善につながる」と述べ、さらに「エコシステムのこの部分が複雑になるにつれて、IoT向けのマネージドサービスプラットフォームを提供するサードパーティも増えると予想される」と続けた。

 今年注目すべき業界は、医療業界、製造業、自動車業界、地方自治体や公的部門の4つだという。以下では、IoTがこれらの業界に及ぼす影響についてのKhaled氏の予想を紹介する。

医療

 2019年中には、医療業界でIoTに関する多くの取り組みが見られるようになる。

 Khaled氏は、「医療プロバイダの間では、医療費の抑制、医療の質の改善、集団の健康の向上という『トリプルエイム』(医療業界の3つの目標)を実現するためにIoTの活用が進む」と述べている。例えばすでに、交換可能な医療器具による感染リスクを減らすことを目的とした埋め込み型デジタルツールの試験運用が、大規模に実施されている。また、「スマート糸」やスマートステッカー、パッチ型センサーなどの精度が改善され、心拍計の計測値から身体の化学的状態、睡眠パターンまで、あらゆる情報を追跡できるようになっている。

 医療費を支払う側にとっても、IoTの活用は、集団リスク管理(訳注:公衆衛生や健康保険の分野で使われる考え方で、集団の健康リスクの管理を指す)の改善や、それに伴う医療費償還率の改善を進めるまたとないチャンスだ。また長期医療施設でIoTを利用し、センサーから得られた情報によって転倒リスクや感染の可能性を減らすことができれば、やはり償還率を改善することが可能だとKhaled氏は言う。

 ウェアラブルフィットネスデバイスのエコシステムが成長していることは、保険会社が積極的にリスクを減らそうとしている被保険者を識別するのにも役立つだろう。

 IoTで患者の服薬アドヒアランス(医者からの服薬指示の遵守状況)を改善できれば、被保険者と保険会社の両方にとって、コスト削減と健康改善の大きなチャンスになる。

製造業

 Khaled氏は、2019年の製造業では、2018年のトレンドが加速すると予想している。「製造業者がIIoT(産業用IoT)を利用して、すべての設備をオンライン化し、すべてが繋がっている工場や倉庫、流通センターを実現しようとする取り組みが増える」と同氏は述べている。

 一部のケースでは、ブロックチェーン使って製造工程の管理や流通後の製品の追跡を行う試験的な取り組みに、IoTで得られたデータが利用されるという。また、こうしたセンサーエコシステムとAIを組み合わせることで、施設全体が「学習」し、電力消費を抑制したり、生産データに潜むトレンドを発見して効率改善に繋げたりすることができるようになる。

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