富士通は5月14日、データと人工知能(AI)の融合的活用(Data×AI)により、顧客企業の目的志向型ビジネスの実現を支援するプロセスとフレームワーク「Design the Trusted Future by Data×AI」を策定したと発表した。7月から順次適応する予定だ。
このフレームワークについて富士通AIサービス事業本部長兼データ利活用推進室長の渡瀬博文氏は、「目的志向型とは、目的の達成に主眼を置く考え方。それにより、必要なデータを特定することができる。現在、70%以上の企業が目的志向型の企業になることを望んでおり、そういった企業を信頼すると言われている」と述べた。
富士通の渡瀬博文氏
同サービス策定の背景について渡瀬氏は、「近年、データやAIの活用によるビジネスの拡大・変革が注目されているが、実際にはデータの不足やその準備に要する時間、保持にかかる費用、信頼性への懸念といった理由から、世界におけるデータの約85%は活用されていない。また、コールセンターといったAIの価値が明確なところでは実装が進んでいるものの、われわれの調査によると実装段階に至っている企業は、全世界で約18%にとどまっている」と説明した。
富士通は、2011年からビッグデータ活用サービスを提供しており、2015年には「FUJITSU Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」の提供を開始。今回、データやAIを活用した約2000件の取り組みを生かして「Design the Trusted Future by Data×AI」を策定した。
「Design the Trusted Future by Data×AI」の概要は以下の通り。
「Design the Trusted Future by Data×AI」のイメージ(出典:富士通)
1. 価値創出を実現するプロセス
- 目的や課題を明確にした上でData×AIにより実現手段を仮説設計する「目的志向設定」、必要なデータを収集・流通・蓄積する「データ準備」、データを生成・分析、効果測定を行う「データ活用」、業務適用・最適化・定着化で価値を生み出す「業務実行」の4段階で構成している
- ITベンダーは第3段階の「データ活用」ばかりに注力しがちだが、同サービスは目的や仮説設定から定着まで全ての段階を支援する。精度に課題があった際は、人による判断を組み合わせ、部分的にデータ・AIを適用。そして改めてデータ収集や最適化を行い、AIに学習させることで確実な定着化を目指す。これにより、多くの企業が抱えている「データ不足や、データ準備に要する時間、データ保持にかかる費用が原因で、データ・AIを業務に適応させるまでに至らない」という課題に対応する
- セキュリティやガバナンスを考慮した運用設計により、持続可能なData×AIの業務適用を実現する。プロセスの上流にセキュリティ設計を位置づけ、データ特性に応じて匿名化といった人権上の配慮に必要な対策を取り込むことで、セキュリティ対策を行う
- 各プロセスに最適なサービス、製品、先端技術などを用いることで、Data×AIを実現。そこで蓄積された知見を生かし、顧客企業の要望に応じてカスタマイズできる。欧州で展開しているヘルスケア、セキュリティ、リーガル分野に特化したデータ活用サービスや、世界的に実績のあるソリューションを体系化し、共通のフレームワークでData×AIの業務適用を推進する
- 世界中の研究開発拠点と連携し、既に海外で実装が進みつつある先端技術を導入。長年のデータ・AI領域における基礎・応用研究の先端技術を適用
- 先端技術を各プロセスに導入し、プロセスそのものの自動化・効率化・生産性向上を図る。また、蓄積したData×AIから得た知見を他のプロセスにも生かすことで、全ての段階における生産性の向上を実現する
2. データ・AIの業務適用を支えるフレームワーク
今後の目標に関して渡瀬氏は「2024年をめどに『Design the Trusted Future by Data×AI』の全プロセスを適用したプロジェクトを100件、個別サービス・製品・先端技術の提供を3000件目指す。この実現のため、プロジェクト全体を把握してプロデュースできる人材を世界的に3000人ほど育成する。またオープン戦略のもと、スタートアップ企業50社と協業したい。加えて、われわれもスタートアップ企業を3社ほど設立するつもりだ」と語った。