ブロックチェーンは現在、最も過剰に持ち上げられているテクノロジーの1つと言えるだろう。その支持者たちは、新しい通貨の創出から、政府活動の透明性の向上、サプライチェーンの安全性の強化に至るまで、あらゆることが可能だと主張している。さらには、ブレグジット後の英国と欧州の間における貿易にまつわる問題を解決する魔法のようなテクノロジーだとさえ主張する人々もいる。
しかし、ブロックチェーンに対する関心の高まりとは裏腹に、市場における宣伝文句と現実の間には依然として大きな隔たりがある。
Gartnerの調査によると、実際にブロックチェーンのプロジェクトを配備している、あるいは短期計画の最中であると回答したのは、10社のうち1社の割合にとどまっているという。同社は、こういったイニシアティブの大半が初期の実験段階から抜け出せていない点にその理由があると述べている。
Gartnerのシニアリサーチディレクターを務めるAdrian Leow氏は、「ブロックチェーンのプラットフォームやテクノロジーの市場はまだ揺籃期にある。また、製品のコンセプトや機能群、コアアプリケーションの要件といった、核となるコンポーネントに関する業界のコンセンサスが得られていない状態だ」と警告している。
同社は、ブロックチェーンのプロジェクトで陥りがちな大きな過ちを7つ挙げている。
- ブロックチェーンそのものに対する誤解や誤用がある
ブロックチェーンのプロジェクトの大半は、分散化されたコンセンサスやトークン化、スマートコントラクトといった機能を無視し、分散台帳技術(DLT)を用いたブロックチェーン上へのデータの記録のみを目的としている。このようなプロジェクトを遂行する組織は、ブロックチェーンの完全な機能すべてをめったなことでは使用しないため、そもそもブロックチェーンを実際に必要としているかどうかという疑問につながっていく。 - ブロックチェーンテクノロジーが本番使用に耐えられるという前提に立っている
ブロックチェーンに関するほとんどのサービスやテクノロジーは、セキュリティやネットワーク管理サービスに対する期待を伴う大規模な本番環境で稼働させるには、あまりにも未熟すぎる。 - 基本的なテクノロジーと完全なシステムを混同している
ブロックチェーンは基盤となるテクノロジーであり、完成されたアプリケーションではなく、ユーザーインターフェースやビジネスロジック、データの永続性や相互運用性を支えるメカニズムといった機能が欠落している。Gartnerは「ブロックチェーンの話になった場合、この基盤レベルのテクノロジーは、完全なアプリケーションのソリューションから大きく離れているわけではないという暗黙の前提が存在している。しかし、そうではない」と述べている。 - ブロックチェーンのことを単なるデータベースやストレージメカニズムだと誤解している
ブロックチェーンは、信頼できない当事者がとった行動の記録を、不変で権威ある、そして信頼性を伴ったかたちで提供するためのものだ。つまり、ブロックチェーンのエントリーは変更できないという点で、従来のデータベースとは異なっている。このためGartnerは、場合によっては従来のデータ管理ソリューションの方が適切だと述べている。 - 相互運用性や標準が存在するという前提を置いている
ほとんどのブロックチェーン製品は発展途上の段階であるため、あるサービスと別のサービスの間で将来的な相互運用性が保証されると仮定してはいけない。またGartnerは、ブロックチェーンプラットフォームを選択する際には、他のベンダーから今後登場するテクノロジーとの相互運用性を期待してはいけないと警告している。 - スマートコントラクトが成熟したテクノロジーだと信じ込んでいる
スマートコントラクトはおそらく、ブロックチェーンがもたらすテクノロジーのうちで最もパワフルなものだ。しかし、スケーラビリティーと管理性にはまだ難題が残されており、成熟するまでにはあと数年が必要となるはずだ。 - ガバナンスの懸念を無視している
人間の振る舞いや動機が、公開型のブロックチェーンプロジェクトの技術的なガバナンスを通じて取り組まれることはめったにない。このため組織は、自らのプロジェクトの成功を阻むリスクとなり得る問題に注意しておく必要があり、こういったガバナンスモデルの定義を支援するグループへの参加を考慮すべきだ。