ソフトバンクは7月2日、法人事業戦略説明会を開催した。法人事業を成長の原動力と位置付け、IoT/5G、AI(人工知能)、データ活用の領域で企業や社会の課題解決に取り組んでいく。デジタル変革を推進する専門部隊を新設し、営業利益を倍増させる計画だ。
同社法人事業の事業領域は、固定回線とモバイル回線の通信事業を軸足に、IoTやロボット、AI/RPA、クラウド、セキュリティ、デジタル広告などのソリューションを展開。2018年度は売上高6205億円(前年度6042億円)、営業利益763億円(同706億円)で増収増益になった。「数年内に営業利益を倍増」(代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏)する計画だ。
代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏
その成長の中核を担うのが、新設された専門組織のデジタルトランスフォーメーション(DX)本部になる。同社の「エース級の人材」(代表取締役 副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏)を結集し、2017年10月に120人体制で設立。2019年7月現在は約140人が所属し、ソフトバンクの次の柱になる事業を創出することを目指す。
デジタルトランスフォーメーション本部 本部長の河西慎太郎氏によると、社会課題を解決する新規事業としては、既に35のプロジェクトが事業化に向けて進行中であり、そのうちの17件が2020年度までに収益化の予定であるという。具体的には、三菱地所や住友生命、国土交通省、各自治体などと社会課題の解決に向けた取り組みがスタートしているとする。
代表取締役 副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏
同社の調べでは、社会課題による経済的損失は100兆円に及ぶ。その多くは、労働人口の減少に端を発する。DX本部の注力領域は、小売・流通、不動産・建設、サービス・観光、ヘルスケアになる。そして、これらの領域を横断的に支える物流業界のデジタル変革にも取り組む。
説明会では、物流DX戦略の事例として、イオン九州との実証実験が発表された。イオン九州では、イオンショッパーズ福岡店のネットスーパーの注文品を夜間22~23時を含む時間帯に宅配する実験を行っている。CBcloudの配送マッチングサービス「PickGo」を活用して、荷量に応じて必要な時に、必要な車両数だけを手配し、地域の登録ドライバーとマッチングする配送体制を構築した。
ソフトバンクの物流DX戦略
ネットスーパーの配送業務では、荷量が日によって異なっても常に一定数の配送車両を確保する必要があり、余分なコストの発生や急な需要の変化に対応できないなどの課題があった。そのため、即日配送や夜間配送に十分な対応ができず、ネットスーパーの利用が進んでいない状況にあった。
経済産業省によると、国内のEC事業は年率9%で成長している。それに合わせ、宅配個数は年に1億個のペースで増加(国土交通省)し、2017年には年間43億個に達しているという。その一方で、単身世帯や2人世帯の割合が増えることで、日中帯に荷物を受け取ることが困難な世帯が増加し、再配達荷物は年間8億個(同)に及んでいる。
これに拍車をかけているのが、ドライバー不足の拡大である。2017年に43.2億個だった荷物が2027年に87.3億個に増加する一方で、ドライバー数は83万人から72万人に減少。ドライバー1人当たりの取り扱いに持つ数は10年間で2.4倍に拡大する見込みだ。
ソフトバンクでは、サプライチェーンをデジタルでつないでいくことで、ドローンやロボット、自動運転による未来型の配送にも取り組んでいくとしている。
配送マッチングサービスの概要