日本IBMは9月13日、メインフレームの最新モデル「IBM z15」を発表した。グローバルでは日本時間12日夜に発表済みだが、国内向けには製品概要や人材育成策などの説明が行われた。
z15は、2017年にリリースされたz14の後継モデルとなる。同時にLinux OS専用モデルの「LinuxONE III」とストレージシステムの最新モデル「DS8900F」も発表。出荷開始日は、z15とLinuxONE IIIが24日、DS8900Fは11月15日で、DS8900Fには「Power9」プロセッサーが搭載される。
IBM z15の特徴
z15の特徴は既報の通りだが、筐体が従来の専用サイズから業界標準の19インチラックに変更され、買収を完了したばかりのRed Hatの「OpenShift」やミドルウェア群「IBM Cloud Paks」を活用したマルチ/ハイブリッドクラウドを構成可能とするプラットフォームに進化している。
また、全プロセッサーを使用して計画停止時間を最小化する「System Recovery Boost」機能(この処理に伴う課金は発生しないという)や、z15から外部環境にコピーされるデータに対して一元的に暗号化による保護を行う「Data Privacy Passports」機能を新たに提供する。Data Privacy Passportsは、欧州の一般データ保護規則(GDPR)を皮切りに今後世界的に広がっていくと見られる個人情報やプライバシーのデータ保護規制への対応を支援する役割を担うと位置付けられている。
「Data Privacy Passports」は、z14でのメインフレーム内データの暗号化による保護をメインフレームの外側にも広げる。GDPRなどの規制の整備が世界的に本格し始めており、プライバシーデータへの適切な対応は今後の企業にとって重要な経営課題になるとされている
人材育成施策では、15年目となる学生など若手を対象にしたプログラミングコンテストを行う。これまで120カ国約3000校の学生8万5000人がメインフレーム技術を学び、1万8000人がコンテストに参加、前回は世界トップ3の1人に早稲田大学の大学院生が選出されている。
“レガシーシステム”とみなされがちなメインフレームだが、世界の大企業のほとんどがメインフレームを利用しており、山口社長は「将来にわたるエンジニア人材の育成がメーカーの使命」と強調した
説明会に登壇した代表取締役社長の山口明夫氏は、4月の社長就任時から取り組む経営テーマにおいて、z15が企業顧客におけるデジタル変革の推進を支援する一翼を担う位置付けだと述べた。システムズ事業本部長 常務執行役員の浅海孝氏は、z15の開発では102社342人の顧客企業担当者と共同で467時間に及ぶディスカッションとデザイン思考のアプローチを採用したと説明する。
日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏
IBM Zシリーズは、2010年代前半にLinux対応などを本格化させ、前モデルのz14でクラウド環境に対応するプラットフォームとの位置付けが確立されたとする。z15は、これまでの進化を踏まえ、今後本格化するクラウドネイティブなシステム環境や企業のデータビジネスに向けたメインフレームの新たなステップになる。