企業による人工知能(AI)の利用が急速に進んでいる。Gartnerの計算によると、組織の半数以上がすでに、少なくとも1つのAIをデプロイして運用しており、今後数年以内にAIの採用を大幅に加速する計画を立てている。同時に、こうしたツールを開発したりデプロイしたりする組織は、本当の意味でAIの不具合や欠点にまだ対処したことがない。デプロイしたモデルが公正で倫理的で安全なものであろうと、あるいは説明可能なものであろうとだ。
IBMは、欠陥のあるAIシステムが世界にあふれる前に、信頼できるオープンソースAIワークフローの開発を促そうとしている。そうした取り組みの一環として、同社は「一般会員」としてLinux Foundation AI(LF AI)に参加する。
IBMのオープンテクノロジー担当バイスプレジデントを務めるTodd Moore氏は、米ZDNetの取材に対して次のように語った。「AIは、成熟するにあたって、一般市民から信頼や信用を得られるような形で成熟する必要がある」「あまりに頻繁に耳にする声として、AIはブラックボックスだ、どのようにしてその結論にたどり着いたのかわからない、モデルにバイアスがかかっている、もっと公正でなければならない、といったことがある。そうしたことが声高に明言されるのをこれまで聞いてきて、業界の前進を助けるべき時だと感じた」
Linux FoundationのプロジェクトであるLF AIは、AIや機械学習、深層学習関係のオープンソースプロジェクトの促進に向け、特定のベンダーに偏らない中立的なスペースを提供する。AT&T、百度(バイドゥ)、Ericsson、Nokia、華為技術(ファーウェイ)などの大手企業が後援している。
IBMには、オープンソースを支援してきた長い歴史があり、信頼できるAIの開発については、急速にハードルを上げるのがなぜ正しい方法であるのか、Moore氏は次のように説明した。「全員が協力して迅速に改善を重ねていけば、どの企業1社にできるよりも、はるかに大きく進展できる」
オープンソースプロジェクトを支援すれば、IBMのようなAIベンダーにとって市場での機会が拡大するという付加的なメリットもある。目標は、AIの信頼性を高めるツールを開発し、「誰でも検査や貢献ができる方法で、共同で行うこと」だ。
IBMは、LF AIに参加することで、同組織の全プロジェクトに、信頼できるAI技術をもたらすことを目指している。IBMは、LF AIの委員会と協力し、実用環境でオープンソースツールを利用するための参照アーキテクチャーやベストプラクティスを構築する予定だ。
IBMはすでに、信頼できるAIの開発に役立つ一連のオープンソースツールキットを提供することで、こうした面での取り組みの先頭に立ってきた。
さらにLF AI Foundationと非公式な形で協力し、イベントに参加したり、Foundation Technical Advisory Committeeの「ML Workflow」のようなプロジェクトに貢献したりし始めている。
信頼できるAIの開発は初期段階だが、Moore氏は次のように述べている。「こういった取り組みが始まり、問題が認識されるようになったのはいいことだ。デファクトスタンダードを確立し、人々の役に立つツールを開発できるかどうかは、われわれにかかっている」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。