富士通の時田隆仁 代表取締役社長は9月26日、経営方針説明会を開き、IT企業からデジタルトランスフォーメーション(DX)企業への転身を目指すと表明した。2020年1月に500人体制のDX新会社を設立するほか、10月1日付で新設される「CDXO(Chief Digital Transformation Officer:最高デジタルトランスフォーメーション責任者)」職に時田氏が就任する。
経営方針を発表する富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏
説明会で時田氏は、グローバルの法人IT市場では、IT部門顧客と中心する従来のシステム構築ビジネスなどが2023年まで年平均2.3%ペースで縮小する一方、従来型のIT環境を刷新する市場では同6.0%、データ活用ビジネスでは同33.4%で拡大するとの予測を紹介した。
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これを背景にDX企業への転身は必須とし、経営方針では、従来のビジネスは既存の顧客基盤で収益性の改善を図る一方、IT環境の刷新やデータ活用のビジネス(デジタル領域)を成長領域として将来に渡る収益基盤化を目指す。これにより、今後も健全な経営環境を維持できる見通しだと説明している。
デジタル領域では、デジタルを社会や企業にとって価値あるものに転換し、それを循環させる仕組みを確立させることが不可欠だとする。既に量子コンピューティングによる経路最適化問題の解決、業界横断型のモビリティーサービス基盤の開発、顧客体験(CX)による新しい収益モデルの実現に取り組んでいるとした。
新会社では、自律した独立性のある企業との位置付けで、金融や製造などの企業顧客向けにDXコンサルティングサービスを提供していくという。同社グループ内から500人を「DXコンサル」として組成し、企業顧客に対するDXの提案からシステムの運用までをワンストップで提供する。2022年度までに2000人体制に拡大させる計画としている。富士通グループへの波及も期待し、3000億円程度の売り上げが見込まれるとした。
またクラウド、ハイパフォーマンスコンピューティング、AI(人工知能)やIoT/エッジコンピューティング、5G(第5世代移動体通信システム)、サイバーセキュリティ、データプラットフォームの7つを重点技術に位置付ける。これら重点技術での研究開発あるいは企業買収・出資、富士通社内の改革などで、今後5年間に5000億円を投じ、富士通自体の改革を確実に進めると述べた。
ビジネスモデルはサービス型への転換を進める。グローバルデリバリーセンターを中心にオフショア環境を活用して受託開発主体から提供範囲を広げ、高収益化を図る。AIやRPAを積極導入して各種作業を自動化し、2022年度までに700億円の利益改善を実現させるとした。
また製品領域では、ハイパフォーマンスコンピューティングや5Gネットワーク関連に注力、海外事業でも変革を継続していくとし、新たに北・西欧州市場と中・東欧州市場を新設、日本を含む6極体制でサービスを中心とするビジネスモデルに転換していくという。社内変革については、業務環境や教育の多様化を通じてグループ13万人の業務プロセスや組織文化を変革させていくという。人事制度を変更してジョブ型人事制度、高度人材処遇制度などを2019年度中に導入し、人材採用も通年化する。
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一連の施策を通じて年率10%ペースの売り上げ拡大を実現し、2022年度に売上高3兆5000億円(うちデジタル領域では1兆3000億円)、営業利益率10%の達成を目指す。単年度1500億円規模のキャッシュフローの創出も実現させることで、成長領域や人材育成、社内改革、株主還元などに当てていくとした。最後に時田氏は、「お客さまへの貢献を通じて富士通の持続的な成長を遂げていきたい」と表明した。