ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は、次世代バンキングシステムをパブリッククラウドで構築する計画だ。その中核を担う勘定系システムの構築基盤として「Google Cloud Platform」(GCP)の採用を決めている。
FFGは、5月にシステム開発を手掛けるゼロバンク・デザインファクトリー(ZDF)を設立。ZDFにおいて次世代バンキングシステムの研究開発を開始するとともに、8月にはモバイル専業の新銀行「みんなの銀行」の設立に向けた準備に着手している。みんなの銀行は2020年度の立ち上げを予定している。
その背景には、デジタル技術の進展に伴う顧客の行動変化や社会構造の変容がある。これに柔軟に対応すべく、商品・サービス、業務プロセス、システム基盤といった既存の銀行ビジネスにおける構成要素をデジタル技術を使って根本的に変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。
みんなの銀行は、デジタルサービスに慣れ親しんだデジタルネイティブ世代をターゲットに、本来の銀行が持つという「預金」「為替」「融資」の3大業務と、「金融仲介」「信用創造」「決済」の3大機能をゼロベースで“再定義”するという。その上で、顧客の行動変容に即した新しいサービスや顧客理解に基づく一人ひとりに最適なサービスの提供、新銀行の金融機能や商品をAPIを通じて外部事業者に提供する“BaaS(Banking as a Service)型ビジネス”の実現を目指す。
福岡銀行 取締役副頭取で、ふくおかフィナンシャルグループ 取締役執行役員とゼロバンク・デザインファクトリー 代表取締役の横田浩二氏は会見で、「銀行自身が銀行を再設計・再定義する。その上で、DXで再定義した銀行の将来像を追求していく」と新銀行設立と次世代バンキングシステム構築の狙いをアピールした。
みんなの銀行のコンセプト
みんなの銀行を支える次世代バンキングシステムには、ビジネスニーズに即応できるデジタルネイティブなシステムであることに加え、銀行システムとして安心・安全・確実なサービスを提供するミッションクリティカルなシステムであることが求められた。
この点において、GCPは、新銀行が掲げる“デジタルネイティブバンク”の基本コンセプトに合致するとともに、銀行として求められる可用性や耐障害性などの要件を満たしていると判断された。横田氏は、GCPについて「変化への柔軟かつ迅速な対応を可能にするアーキテクチャーであり、高い性能と可用性を確保できるクラウド基盤だ」と評価した。
パブリッククラウド上にシステムを構築することで運用コストの最適化を図り、金融機能をマイクロサービスとして切り出すことで、柔軟かつ迅速な商品・サービスの開発と提供を可能にするとしている。次世代バンキングシステムでは、コンテナーサービス「Google Kubernetes Engine」(GKE)、分散型データベースサービス「Spanner」、データウェアハウスサービス「BigQuery」などが用いられている。
一方で、既存の勘定系システムについて、横田氏は、密結合で開発された状態となっており修正が難しく、数年単位でクラウドにリフト&シフトできるものではないとした上で、そのまま継続利用する意向を示した。
グーグル・クラウド・ジャパン 代表の阿部伸一(左)とFFGの横田浩二氏