Google Cloudの年次カンファレンス「Google Cloud Next '19 Tokyo」が7月31日~8月1日、都内で開催されている。初日の基調講演では、DeNAやJR東日本、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)など大手各社がGoogle Cloudを利用した取り組み事例などを発表した。
企業のITシステムのクラウド化が進む昨今、Google Cloud Platform(GCP)は、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureと並んで、その基盤を提供する“メガクラウドベンダー”の3強の一つに名を連ねる。今回のイベントは「かつてないクラウドを体験しよう」をテーマに、約1万9000人が参加登録しているという。日本代表の阿部伸一氏は、日本での事業方針を「Google Cloudが提供するものをお客さまに使ってもらう以上に、Google Cloudをお客さまに合わせていく。お客さまがしたいことを実現し、課題を解決するパートナーになり、生産性や利益の向上を支援する」と説明した。
Google Cloud テクニカルインフラストラクチャー部門シニアバイスプレジデントのUrs Holzle氏
テクニカルインフラストラクチャー部門シニアバイスプレジデントのUrs Holzle氏は、5月に開設したグローバルでは20番目となる「大阪リージョン」や、2020年春の開通を目指すグアムや日本、オーストラリアを接続する3本目の海底ケーブル「Japan-Guam-Australia Cable System」に触れ、日本でのGCPの利用環境が大幅に向上すると強調。また、この1年でGoogle Cloudの認定パートナーと開発者が4倍に増え、新規ユーザーも特に大企業が増加していると語った。
クラウドを採用する日本企業は増えているものの、依然として基幹系システムの多くはオンプレミスで稼働している。それらをどうクラウド環境に移行させられるかが、同社を含むクラウドプロバイダーにとっての大きなテーマでもある。基調講演では、伝統的な基幹系システムをクラウドなど最新環境に対応させていく「モダナイズ」と、クラウドベースで開発する新規システムの取り組みが紹介された。
まず登壇したDeNA 代表取締役会長の南場智子氏は、経営者の立場からクラウドへの取り組みを説明した。経営コンサルティングファーム出身の南場氏にとって、1999年の創業当時は「“モノ作り”への意識が低かった」といい、サービスローンチ予定日に全くシステムの開発が進んでいないなど、苦い体験をしたと振り返った。
DeNA 代表取締役会長の南場智子氏
それ以来、技術と内製開発にこだわり続け、「毎秒数十万ものリクエストを3000台のサーバーとわずか数十人のエンジニアで問題なく運用できる体制」(南場氏)が経営陣の自慢だった。そんな中でクラウドの本格導入が社内で議論されるようになったのは、わずか1年前の2018年だったという。
「経営としては大きな意思決定だった。何年も問題なく稼働させ、徹底したコスト削減を実現してきた“オンプレミス派”と、先進的な技術の活用を求める“クラウド派”の意見が対立し、思わず経営会議で『これは宗教(戦争)なの!』と叫んでしまった」(南場氏)
オンプレミス派は、長年の運用実績に照らしてクラウド化に要する投資が甚大になるとし、クラウド派は、先進的な技術やデータを駆使してこれまで以上に創造的なビジネスを実現していく必要性を主張したという。両者の意見を踏まえて南場氏は、最終的にクラウドの本格導入を決めた。
「技術の蓄積があったからこそ、クラウドを使い倒せばコスト削減も含めて創造的なビジネスが可能になると、一点の曇りもない意思決定ができた。現在では、BigQueryによって膨大なデータを分析し、収益性を重視した改善と新規サービスの開発をしている。かつては勝手にGoogleをライバル視していたが、今はGoogleを超える影響力をGoogleと一緒に実現したいと考えている」(南場氏)