Google Cloudは7月31日、都内で開催した年次カンファレンス「Google Cloud Next '19 Tokyo」の基調講演でマルチクラウド環境に対応する「Anthos」への移行やデータベースのマネージドサービス、Active Directory連携などに関するアップデートを多数発表した。
ベータ版サービスを開始した「Migrate for Anthos」のデモ
まず、オンプレミスやマルチクラウド環境でアプリケーションを一元的に管理する「Anthos」では、既存アプリケーションを容易にAnthosの環境へ変換できる「Migrate for Anthos(発表時の名称はAnthos Migrate)」のベータ版サービスの提供を同日付で開始した。
Anthosは、4月に米国で開催された「Google Cloud Next '19」で発表され、既に一般提供が開始されている。Migrate for Anthosでは、Google Cloud Platform(GCP)やAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureなどのクラウドサービスあるいはオンプレミスで稼働する仮想サーバーのアプリケーションを、Google Kubernetes Engine(GKE)のコンテナーへ直接変換し、各種環境に移行することができる。
エンジニアリング クラウドサービスプラットフォーム部門 バイスプレジデントのEyal Manor氏は、企業システムの80%がオンプレミス環境で稼働し、75%の企業がマルチクラウドやハイブリッドクラウドの採用を検討しているといった調査データを引用し、「複雑なITインフラ環境で一貫した運用管理性を提供する必要がある」と述べた。
アジア太平洋地域におけるAnthosの初めての導入事例講演としてNTTコミュニケーションズが登壇した
併せて講演では、NTTコミュニケーションズがAnthosの導入を発表した。同社のIaaSサービスやAI型音声認識サービスのCOTOHAなどに適用する。同社第五営業本部長の工藤晶子氏によれば、既に一部でGKEの実装を始めており、20%の稼働削減効果を得たという。7月30日に巨樹の会とビーグル、ウルシステムズと共同で開始した臨床データから患者ごとに応じたリハビリテーションプログラムなどの提供を実証する実験においてもAnthosを利用していくとした。
「Cloud SQL for Microsoft SQL Server」のデモ画面
また、Microsoftに関する2つのマネージドサービス「Cloud SQL for Microsoft SQL Server」と「Managed Service for Microsoft Active Directory」を近日中に日本で提供を開始することも明らかにした。両サービスも4月のGoogle Cloud Next '19で、2019年中の提供開始が発表されていた。この他にサーバーレスプラットフォームの「Cloud Run」の提供を東京、サウスカロライナ(米国)、ベルリンの3リージョンで新たに開始したことも明らかにした。
「Managed Service for Microsoft Active Directory」のデモ。オンプレミスのActive Directoryにある資格情報を利用してGoogle Cloudのユーザー認証を行える