アイ・ティ・アール(ITR)は10月3日、都内で年次カンファレンス「IT Trend 2019」を開催し、「国内IT投資動向調査2020」の速報値ベースによる状況を紹介した。分析などを踏まえた調査結果の詳細は12月に発表される。
国内IT投資動向調査は、企業のIT投資の意思決定関与者などを対象に実施しており、今回で19回目となる。最新の調査は8月23日~9月3日にウェブで行い、2826件の有効回答を得た。現在は分析を行っており、速報値から見て取れるトレンドをシニア・アナリストの三浦竜樹氏が解説してくれた。
アイ・ティ・アールの三浦竜樹シニア・アナリスト
詳しい分析結果は12月まで待たれるが、三浦氏の挙げたトピックの中で特に注目したのが、近年バズワードの1つになっている「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に関する企業の実態だ。
まずDXに対する意識では、「全社レベルで取り組むべき最重要事項だと思う」が27%、「少なくとも部門・部署によって取り組むべき最重要事項だと思う」が34%に上り、DXの必要性を強く意識する企業が半数以上を占めた。「重要だが、自社での効果は限定的だと思う」も21%あり、三浦氏は「何らかでもDXが大切だと考えている企業は8割以上」と指摘した。
DXの取り組み状況では、「部門横断でデータを活用する仕組みやプロセスの整備に着手」「デジタル戦略を担うスタッフの採用」がともに29%で最も多く、「デジタル戦略を専属で担う役員(CDO)の任命」「経営戦略で『デジタルビジネス』のビジョンや方針を位置付けている」(ともに25%)が続く。なお、「当てはまるものはない」も25%だった。
業種別でのDX推進体制の状況は、専任部署を設置するケースが金融・保険と情報通信で2割を超え、既存部門が担当したり部門横断型のプロジェクトチームが推進したりするケースを含めると、全業種で50%を超えている。推進体制の設置率が高い業種は情報通信(71%)や金融・保険(70%)で、最も低いのは卸売・小売の52%となっている。
DXを推進する専任部署で中心役を担っているのは、IT部門/IT子会社が64%で最も高かった。事業部門が担うケースは33%で、新規採用するケースは3%にとどまる。既存部門が推進するケースでも中心役はIT部門が47%で最も高い。その他の管理系部門や事業系部門は10%以下だった。
これらの回答状況から三浦氏は、DXに対する企業の意識が高まる中で取り組みの現状としては社内の体制づくりが中心だとし、外部の企業や組織と連携・協業するエコシステム作りの段階までには至っていないと解説する。
この他に速報値からは、IT部門の役割としてIT運用やセキュリティ管理を現状では重要ながら3~5年のうち重要ではなくなると考える回答者が多いことや、新規導入する可能性が高い製品やサービスのトップに公共系を除く全業種が「5G(第5世代移動体システム)」を挙げていることなどが分かった。
12月に発表するレポートでは、同社アナリストによる詳細な分析や解説、過去18年間の傾向、今後のトレンド予測など、IT部門の指針になる情報を提供する予定だという。