米Boxは10月3~4日、米サンフランシスコで年次イベント「BoxWorks 2019」を開催した。初日の基調講演では、共同創業者で現在もCEO(最高経営責任者)を務めるAaron Levie氏が、将来の仕事を支える技術が必要であることをアピールした。背景にあるのは、クラウドとデジタル化――これにより人々の働き方が変わってきているという。
創業14年のBoxにとって今回のBoxWorksは9度目となる。会場のモスコーニセンターには顧客やパートナーなど約5000人が集まった。同社はオンラインストレージを企業向けに提供することからスタートし、コンテンツ管理、コラボレーションと機能を拡大させている。現在の顧客数は9万5000社で、Fortune 500企業のうち69%が同社のクラウドを何らかの形で利用しているという。
Box 共同創業者 CEOのAaron Levie氏
今回のイベントにおける最大のフォーカスは“セキュリティ”だ。Levie氏は、「デジタル時代、あらゆるデバイスから、あらゆる機会に、場所を問わずに情報を共有してコラボレーションしたい」と述べた後、「それも、安全な方法で」と付け加えた。
セキュリティへのフォーカスは、企業側のクラウドの受け入れが進み、重要な情報がクラウドに保存されるようになったこと、さまざまなデバイスでクラウドにアクセスし、さまざまなサービスをまたいでデータがやり取りされること、複雑性が増していること――などが背景にある。「15年~20年前の方法では安全にできない」とLevie氏。
Boxはセキュリティのニーズに対応するべく、アクセス管理と脅威検出の「Box Shield」を10月中に一般提供することを発表している。
Levie氏は、「エンタープライズではたくさんの変革が起きており、ビジネスプロセスが変わっている。だが、安全に作業するためのイノベーションは、まだ十分ではない。ここにBoxはフォーカスしている」と述べ、Box Shieldを中核に、セキュリティ機能を今後も拡充していく意向を示した。
セキュリティに加え、ビジネスプロセスとアプリケーションの連携もフォーカスの柱となっている。ビジネスプロセスは、顧客に素晴らしい体験を提供するために社内と社外の接続が重要になっているというもので、既に発表済みの「Box Relay」の強化を発表した。反復作業の多いものについて、コードなしに業務フローを自動化できるというもの。Boxにとっては、ビジネスプロセス側に拡大する動きとなる。
アプリケーション連携は、ここ数年取り組みを進めてきた分野で、APIを通じて他のサービスと連携する。BoxWorksでは、Adobe Systemsとの提携拡大が発表され、BoxでAcrobat PDFの編集やコラボレーションが可能になった。また、Slack、Microsoft Teams、Splunkとも機能の統合を発表している。
Levie氏は、「以前はわずかな数のベンダーから全ての技術を購入していた。だが、クラウドにはたくさんのイノベーションがある」と語る。自分のビジネスプロセスに合う最高の技術を選び、すぐに使うことができるようになった。Boxもその技術の1つであり、よく使われているクラウドとの連携を強化することで、顧客のニーズに応える。「数社から買う時代は終わった。ベストオブブリードの時代だ」とLevie氏。100~200ものクラウドサービスを利用する企業は珍しいものではなく、「これらが相互運用することが大切だ」と述べ、Boxが率先して取り組んでいることをアピールした。
これらは全て、Boxの考える”将来の仕事”につながるものだ。Levie氏は、「少し前までは社内で仕事が完結することがほとんどだった。だが、仕事が社外で行われることが増えている」と指摘し、「仕事は土台から変わっている。あらゆる業界に何らかの変化がある」とする。そして、「社内、顧客、パートナーなどを相手にした従業員のコラボレーション環境を最高のものにすべきだ」と続けた。
最後に同氏は、「Boxは“クラウドコンテンツ管理”という概念を導入した。安全なコンテンツ管理、ワークフロー、コラボレーションができる単一のプラットフォームで、APIを使ってユーザーが使う別のアプリケーションに統合できる」とし、クラウドコンテンツ管理が将来の仕事に向けた変化を後押しする、と述べた。
基調講演では提携関係にあるIBMの会長兼社長兼CEOのGinni Rometty氏も登場し、自社の変革、Red Hat買収、人工知能と技術ベンダーの責任などについて語った
(取材協力:Box Japan)