本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NECの新野隆 代表取締役 執行役員社長兼CEOと、米Dell TechnologiesのMichael Dell 会長兼CEOの発言を紹介する。
「生体認証技術をベースとしたビジネスを“柱”に育てていきたい」
(NEC 新野隆 代表取締役 執行役員社長兼CEO)
NECの新野隆 代表取締役 執行役員社長兼CEO
NECが先頃、2019年度第2四半期(2019年7〜9月)および上期(同4〜9月)の連結決算を発表した。同社の社長兼最高経営責任者(CEO)である新野氏の冒頭の発言は、その発表会見の質疑応答で、生体認証技術をベースとしたビジネスの考え方について聞いた筆者の質問に答えたものである。
同社によると、2019年度第2四半期および上期の連結業績は表に示すように増収増益となった。中でも上期は、エンタープライズ、ネットワークサービス、システムプラットフォーム、グローバルの各分野が前年同期比2桁増の売上収益となった。ただ、2019年度通期の業績予想は変更していない。
NECの2019年度第2四半期(2019年7〜9月)および上期(同4〜9月)の連結業績概要(出典:NECの発表資料)
新野氏はこの業績予想について、「上期の業績については社内の想定比で上振れしたが、通期の見通しについては、今後の収益性の改善や成長に向けた追加の投資、体質改善のための施策の実行を検討するため、変更していない」と説明した。
さらに、「NECにとって2019年度は“ターンアラウンド”の年。下期についても業績の改善に向けて最大限の力を尽くし、2020中期経営計画の達成に向けて勢いをつけていきたい」とも述べた。ちなみにターンアラウンドとは、「方向転換」および「事業再生」といった意味だ。
新野氏が決算会見に登壇した機会に、筆者はぜひ聞いてみたいことがあった。それは、NECはこのところ顔認証をはじめとした生体認証技術をベースとしたビジネスを拡大している印象が強いが、今後このビジネスがどれぐらい広がると予想し、同社の屋台骨になるほどに見ているのか、ということだ。質疑応答でそう質問してみたところ、同氏は次のように答えた。
「生体認証技術については、顔認証技術がこの10月に米国の国立標準技術研究所(NIST)が行った技術評価で5度目の第1位を獲得したように、当社の大きな特長の1つになっている。例えば、現在グローバルで展開しているセーファーシティ事業では、生体認証技術をベースに街全体として安全・安心を追求する動きが広がっている。生体認証技術をベースとしたビジネスは、当社としてもぜひとも“柱”に育てていきたいと考えている」
冒頭の発言はこのコメントから抜粋したものである。生体認証技術をベースとしたビジネスは、おそらくNECの今後の強力なビジネスモデルの1つになるだろう。成長の芽をどれだけ伸ばせるか。新野氏の経営手腕に注目していきたい。