ブロックチェーン技術(分散台帳技術とも呼ばれる)に対する期待は大きいが、これまでにどれだけの成果が上がったかは必ずしも明確ではなかった。最近になって、世界経済フォーラムとAccenture Researchが、550人の企業幹部と79件のブロックチェーンプロジェクトを対象とした調査の結果を含むホワイトペーパーを公表したが、このホワイトペーパーでは、ブロックチェーンはまだエンタープライズ規模での成果を挙げられていないと述べている。調査によれば、企業幹部は初期段階のブロックチェーンプロジェクトに24%の投資利益率(ROI)を期待したが、実際には10%の利益率しか得られなかったという。
提供:Joe McKendrick
ブロックチェーンプロジェクトを推進しようとする者は、実現しようとしているバリュードライバーを明示し、その成果を計測できる指標を示す必要がある。ホワイトペーパーの著者である世界経済フォーラムのSheila Warren氏とAccentureのDavid Treat氏は、ブロックチェーンプロジェクトの進め方についていくつかの提案をするとともに、ブロックチェーンで実現できると考えられるバリュードライバーと、バリューを計測するのに利用できる指標の例を挙げている。以下では、挙げられているバリュードライバーと評価指標の例を紹介する。
可監査性:無くすことができたミスの数。ブロックチェーンは、あらゆる資産とそれに関連する活動を完全に追跡可能な、トランザクションの共有台帳を実現できる。これを利用することで、組織は「人間が手動でデータを検証することなく、生成されたデータの信頼性の水準を向上させることができる」という。
コンプライアンス:緩和されたリスク。「コンプライアンスの管理に失敗すれば、大きなリスクとダメージを被る。ブロックチェーンが改ざんできないことが分かっていれば、データに対する信頼が増す」
データ管理:新製品売り上げ予測の改善。ブロックチェーン技術は、「デジタル資産に関連するデータの来歴および正確さの保証」「認証や改ざんの特定などを通じたデータの完全性の確保」「単一のデータソースからのリアルタイムデータのシームレスな共有を可能にすることによる、データの集約や組織化」の3つの分野でデータ管理を改善できる。
データセキュリティ:阻止された情報漏えいの数。「ブロックチェーン技術では、軍レベルの暗号が使われており、データの共有や保存、データ流出のリスク軽減などのためのよりセキュアな環境を作り出す」
所有権管理:顧客体験の改善。「ブロックチェーン技術を使って知的財産やパーソナライズされたデータのプロファイルを作成することで、品物の履歴や現在の状態を確認する必要がない、物品とデジタル資産の両方のデジタル的な所有権管理が真に可能になる」