優れた最高情報責任者(CIO)は、ITの運用だけではなく、どうすれば利益に貢献できるかと考えることに多くの時間を費やすようになっている。これは、これまでお金の稼ぎ方ではなく、使い方を考えることが仕事だった者にとっては大きな変化だ。
人材紹介会社Harvey Nashの最高経営責任者(CEO)Albert Ellis氏は、「『金の流れを追え』という言い方があるが、この言葉は、今のCIOがやるべきことを一言で表している」と話す。Harvey Nashがコンサルティング会社KPMGと合同で発表した「2019年度CIO調査」によれば、CEOの76%は、ITプロジェクトに対して、費用を節約するよりも、収益を拡大することを求めているという。
Ellis氏によれば、CIOは事業部門がどのように顧客を獲得し、売り上げを上げ、そこからどう利益を上げて会社の成長につなげているかを理解していなければならない。同氏は、それができているCIOは「CEOの求めていることに応えられる」と話す。特に、新しいビジネスモデルや、新しい働き方を支えることが重要だという。
「それができるCIOは、取締役会の一員になれるだろう」とEllis氏は述べている。「規制環境を理解するだけでなく、何が投資を動かしているかを知る必要がある。常に事業部門の潜在的な売上高や利益に注意を払うべきだ」
では、CEOの期待に応えて、CIOが利益に貢献するにはどうすればいいのだろうか。この記事では、そのためのベストプラクティスを3人のITリーダーに聞いた。
新たなビジネスモデルの開発に力を入れる
英国の大手運送会社WincantonのCIOであるRichard Gifford氏は現在、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)を使った業務コストの削減に取り組んでいる。しかし同氏は、経費削減は重要ではあるが、CIOが経営に貢献するための最善の方法は、経営陣のビジネスモデル開発を支援することだと考えているという。
「当然だが、そのためのすべての仕事は、CEOが掲げる目的と方向性が一致していなければならない」とGifford氏は言う。「多くのCIOは新たな市場機会を見つけようとしており、CEOやほかの事業部門の責任者と、何が可能なのかを議論している」
Gifford氏は、IoTやブロックチェーンなどの新興技術を活用して、Wincantonのリソースを追跡し、それによって余剰になった能力を顧客に提供できるようにすることを考えている。同社はすでに、この方向に向けて複数の取り組みを推進している。同社の「oneVASTwarehouse.com」プラットフォームは、倉庫スペースの売り手と買い手をマッチングするものだ。
「利益を大きくするためにもっとも重要なのは、おそらく新しいビジネスモデルを見つけることだ。今のWincantonの事業は利益幅が少ない。今まで通りの事業を続けることもできるが、新しいウェブプラットフォームを導入することも考えられる。そして、後者の利益幅は、今の事業よりもずっと大きいはずだ」と同氏は言う。
Harvey NashとKPMGの調査は、Gifford氏のアプローチが、特に経営幹部の期待に応えるという意味では正しい可能性が高いことを示している。CIO調査によれば、経営陣はITリーダーに解決してほしい問題として、新製品や新サービスの開発を一番に挙げている。