DocuSignという会社は、大企業及び中小企業向けの電子署名ソフトウェアを手がけて有名になった。しかし、大企業がペーパーレスおよび、ワークフローの自動化に向かうなか、同社はデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するエンジンとしての役割を果たす企業としての色合いを強めてきている。
DocuSignの成長戦略をひと言で述べると、紙ベースの合意書や契約書をデジタル化し、合意内容を決済/顧客関係管理(CRM)/統合基幹業務(ERP)といったシステム経由でアクションに変えていくという一連のプロセスに軸足を置いたものとなっている。DocuSignの最高経営責任者(CEO)Dan Springer氏は、この戦略をDXにおける「ラストワンマイル」を解決するものと呼んでいる。
合意書などのラストワンマイルの課題と、DocuSignのプラットフォームが解決しようとしているもの
DocuSignを利用した電子署名のワークフロー
DocuSignは、そのラストワンマイルを起点にして「DocuSign Agreement Cloud」という合意形成のシステム(Systems of Agreement)を構築した。Springer氏は米ZDNetとのインタビューで「Agreement Cloudは複雑なものではないが、数多くのビジネスプロセスを巻き込むようになっている」と述べ、「すべての合意がオンライン化されれば、その前後で作業が発生する」と続けた。
とどのつまり、DocuSignは大企業向けソフトウェアの食物連鎖を1段ずつ登ってきており、2020会計年度の売上高予測も10億ドル(約1100億円)近くになっている。そして同社は、総額250億ドル(約2兆7000億円)の市場にリーチできると見込んでいる。また、アナリストらも楽天的な見通しを有している。Evercore ISIのアナリストKirk Materne氏は、同社のリサーチノートに以下のように記している。
われわれは、DocuSignが単なる電子署名という枠を超えて製品ポートフォリオを拡充し、パートナーのエコシステムを成長させていくことで、同社の顧客がDXにおける「ラストワンマイル」に取り組むための支援を提供する良い位置に付け、今後数年にわたって力強い成長をもたらすと確信している。
われわれはまた、顧客のペーパーレス化を支援するというDocuSignの能力から判断して、同社を「ステルス型」のESG(環境と社会、ガバナンス)企業として捉えている。