今はデジタル化による変革の時代であり、あらゆる企業がイノベーションへの意欲を語っているかもしれない。しかし、すべての企業が創造性を高めるために戦略的なアプローチを取っているわけではない。
コンサルティング会社Deloitteの調査によれば、多くの最高情報責任者(CIO)はその分野をリードするイノベーション能力の獲得を目指しているが(59%)、CIOの4人に1人は自分の組織にはイノベーション能力が欠如していると回答しており、イノベーション能力が優れていると答えたのはわずか11%だったという。
Deloitteによれば、CIOには、イノベーションの推進、支援、実現のすべての面で、企業が優れたイノベーション能力を獲得できるよう手助けすることが求められている。重要なのは、同社が説明するイノベーションに対する戦略的なアプローチには、企業のリーダーシップチームからの支援が必要なことだ。
英国のメガバンクであるRoyal Bank of Scotland(RBS)のイノベーション責任者Kevin Hanley氏は、同社の成功には強力なリーダーシップが大きな役割を果たしていると述べているが、これは経営幹部の支援を重視するDeloitteの考え方とも一致している。「RBSの成功の秘訣は、経営トップからの支持があれば、トップダウンでイノベーションプロジェクトを承認できることだ」と同氏は言う。
「現在私たちが行っていることは、すべてボトムアップではなくトップダウンで実現した。欧州のトップクラスのCIOと話をしてみれば、例外なく全員が、自分の組織にもその能力が欲しいと言うはずだ」
大手銀行は一般に、ITやビジネスの変化に対して受け身的に対応していく傾向が強いが、Hanley氏やRBSグループのほかの幹部は、同社は積極的なアプローチを取っていると主張する。RBSグループは、RBS、NatWest、Ulster Bank、Couttsなどで構成される英国の大手金融サービスグループだ。
イノベーションにトップダウンのアプローチを取ることが、大きなメリットを生むことを示す先例もある。Harvard Business Review(HBR)に掲載されたある記事では、米国の上場ハイテク企業の最高経営責任者(CEO)935人の発明行為について調査し、これらの成功している企業の5社に1社には、「発明家CEO」がいることを明らかにしている(この調査では、1件以上の特許を持つ経営者を発明家CEOと定義している)。
この調査はハイテク業界を対象としたものだが、記事では、取締役会は経営陣の発明家としての実績に細心の注意を払うべきだと結論付けている。Hanley氏の考えでは、RBSでの経営チームの役割は、チャンスを見分けるのを支援し、事業部門が変化の速い金融市場についていけるように、あらゆるイノベーションを確実に進めることだという。
「未来について考えるだけでなく、未来から逆算して考えること私たちの仕事だ。世界がどのように変わっているかを理解し、世界の変化に対する視点を持つ必要がある」とHanley氏は言う。「私たちは、主な利害関係者にそのビジョンを明確に伝え、それに向かって行動しなければならない」