IDC Japanは12月12日、2020年の国内IT市場において鍵となる技術や市場トレンドといった主要10項目を発表した。
国内も含め、世界の企業のデジタル変革(DX)に向けた取り組みは継続しており、今後4年の間に世界のGDP(国内総生産)の半分以上がDXを実践している企業による製品・サービスから生み出される「デジタル優位」の状態を迎えるとIDCは見ている。
国内においても、2020年には東京オリンピック/パラリンピックが開催されると同時に5G(第5世代移動体通信システム)の商用サービスが開始されるなど、DXを拡大する準備が社会的、経済的、技術的に整うという。こういった環境の中、IDCは主にITの供給側で2020年に起こることが予測される出来事を以下の10項目にまとめた。
- DXの進展
2020年の国内IT市場は、2019年のPC市場拡大の反動もあり前年比1.3%減となる。だが企業のDXへの投資は着実に増加し、「自社に本当に必要なDX」や、従来の情報システムとの連携も含めた組織全体の最適化が進む。 - Future of Work
DXで組織全体の最適化を目指す企業の増加とともに、働き方改革を超えた概念「Future of Work」の動きが強まる。ワークカルチャーやワークスペース、ワークフォースといった各要素における変革がDXを後押しする。 - クラウドの変化
企業は全社戦略に基づかず個別の業務に最適なクラウドをその時々で導入してきた結果、連携を欠いた複数のクラウドが導入されている「結果としてのマルチクラウド」の状態となる傾向がある。そのため、企業内でクラウドに関するCoE(Center of Excellence:組織を横断する専門集団/研究拠点)を持ち、クラウドの統合管理を行う企業が増加する。 - 安心なデータ共有
より広範なデータへのアクセス/活用が企業競争力の源泉になる一方、安全な実現には課題がある。2020年にはその技術的な解決方法の一つとして、サプライチェーンなどの分野におけるブロックチェーンの活用が始まる。 - インテリジェントビジネスプロセス
約半数の企業が単純業務だけでなく、経営分析やプロジェクト管理など高度な業務も自動化し、人工知能(AI)ベースのソフトウェアを使用して、運用や顧客/従業員体験の向上を実現する。 - サイバーセキュリティの進化
東京オリンピック/パラリンピックはサイバーセキュリティにとっても一大イベントであり、想定外のセキュリティ侵害が発生する可能性も考えられる。その中で企業/組織では、リスクベースアプローチによるサイバーセキュリティ対策の重要性を認識する。 - エッジにおける競争
ITインフラがDXを支えるデータ基盤になるとともに、データを保有する場所の多様化も進む(オンプレミス/オフプレミス、クラウド/非クラウドなど)。エッジでのデータ処理や保存も加速し、エッジインフラ市場の成長と競争が激化する。 - サービスビジネスモデルの変革
ITサプライヤーにおける「as a Service」を目指したビジネスモデル変革が進み、その波はこれまで比較的遅れていたサービスベンダーにも訪れる。2020年は多くのサービスベンダーが産業特化型/特定領域におけるas a Serviceのビジネスに取り組む1年となる。 - IT人材の獲得競争
アジャイル開発とクラウドの利点を活用するクラウドネイティブアプローチによるレガシーシステムの刷新が加速する。アーキテクチャーの変革に加え、アジャイルの採用など開発手法の変革が求められるが、デジタルサービスに必要なスキルやクラウドネイティブアプリケーション関連の技術を持つ人材の不足が変革における課題となる。 - 立ち上がる5G
東京オリンピック/パラリンピックは5Gインフラ整備を促進するために一定の役割を果たす一方で、関心は主にローカル5Gに集まる。製造業を中心にユースケース開発が進むが、技術的に未成熟な面もあるため、2020年はこれらの分野におけるノウハウの蓄積や新たなツールの開発も進むと予測される。同時に、デバイス分野の5G適用も進む。
IDC Japan リサーチバイスプレジデントの寄藤幸治氏は「ITサプライヤーは、数年のうちにデジタル優位の時代が来ることを念頭に置き、その準備をしておかなくてはならない。そのためにも、自らがデジタルファーストの組織になることを目指すべきだ」と述べる。