情報キュレーションサービスやニュース配信アプリを開発・運営するGunosyは、2019年7月に最高データ責任者(CDO)を設置、現メディア事業本部 取締役の大曽根圭輔氏が着任した。データ活用を組織横断で推進するための“旗振り役”を務めている。
2012年11月に創業した同社は、「情報を世界中の人に最適に届ける」を企業理念にメディア事業や広告事業などを展開している。メディア事業では、情報キュレーションアプリ「グノシー」を中核として、KDDIと共同提供している「ニュースパス」、女性向けの情報アプリ「LUCRA(ルクラ)」などサービス提供の幅を広げている。
企業の成長戦略を立てるに当たり、データの活用が不可欠になる。しかしながら、当時はサービスや事業に分かれた部分最適の組織構造になっており、組織横断的なデータの活用が進んでいなかった。
ニュース記事のほか、クーポンや広告といったコンテンツについては、ユーザーの一人ひとりに合わせて最適化された形で提供するニーズが高まっており、アプリやサービスを横断したデータ整備を進めることで、記事配信の効率化や広告効果の最大化を図っている。
「データ活用については、経営に近い立場で旗を振らないと投資にならないと判断した」と大曽根氏は話す。
同社のデータ活用組織で中核を成すのが「Gunosy Tech Lab」になる。データ活用の促進と情報推薦を研究する専門組織として2019年3月に設立され、自社サービスで使う記事配信アルゴリズムの改善や、最先端アルゴリズムの研究開発に取り組んでいる。
研究成果を自社サービスに実装するほか、外部企業への技術提供や国際会議での論文発表なども行っている点も特徴だ。「Gunosy Tech Lab」でエンジニアが技術力を磨くことで、アルゴリズムの改善やクーポン訴求などのさまざまな施策を迅速に実装・検証できるようになり、サービス品質の向上に努めている。
具体的な成果では、「グノシー」へのパーソナライズ機能の導入で記事のクリック率を10%超改善したり、ニュースパスでの関連記事アルゴリズムの刷新によりクリック率を約30%改善したりした。最近では、タイトルなどで煽った“釣り記事”と判定した記事の表示を抑制するアルゴリズムの実装も試験的に進めている。また、“フィルターバブル”や“エコーチェンバー”と呼ばれる現象についても、中長期的な課題としてユーザー行動の分析などを行っている。
・フィルターバブル:パーソナライズされた結果、自分が好むとアルゴリズムに判断された情報ばかりが目に入るようになり、広い視野が失われる現象
・エコーチェンバー:意見を同じくする人々とばかり交流することによって、その主張が強化され更に強く偏ってしまう現象
企業がデータ活用を進めるに当たっては、「データの責任者を立てることが重要」と大曽根氏はアドバイスする。事業のデジタル化が進むと、そこからさまざまなデータが発生するように成り、それらのデータを使って意思決定をするにはリーダーが必要になる。CDOを設置する日本企業が増え、実際に定着していくのか、今後の動きに期待していきたい。
Gunosy 取締役 最高データ責任者(CDO)の大曽根圭輔氏