神奈川県は、AI(人工知能)が学習した内容に基づいてルールを見出し、従来のOCR(光学文字認識)に比べて高い精度で文字を認識できる「AI-OCR」に関する実証事業の結果を発表した。
各検証項目での正読率
これによると、正確性、迅速性、継続性、操作性の4つの観点で検証したところ、対象となった帳票7様式、280枚の正読率は93.44%だった。帳票の中には「漁獲量に関する送り状」10枚があり、水揚現場で記入された文字のため、職員の目視でも判読が困難だった。この帳票の正読率は68.04%だった。この送り状以外の対象帳票だけで正読率を見ると、正読率は96.93%だった。
迅速性では、「かながわの水源地域キャンペーンアンケート」の用紙を、AI-OCRと手作業それぞれ30枚分を処理した時間については、1枚当たりの時間を算出した上で100枚分の時間に換算し比較したところ、手作業では93分を要したが、AI-OCRでは70分となり、23分の短縮ができた。1000枚処理した場合を試算すると、手作業では約15時間、AI-OCRでは約9時間となる。
継続性については、今回の実証事業で使用したAI-OCRは、インターネットのクラウド上で原則24時間365日、夜間・休日も継続して処理が可能なものだった。
操作性については、職員12人に各項目5点満点のアンケートを取ったところ、結果は下表の通りだった。
アンケート結果
なお導入に向けた対応策として、読み取り部分の付近に文字や記号が印字されていると、AI-OCRが誤認識するケースが分かった。そこで読み取いり部分と文字などとの間に十分な余白を設けた帳票を設計する必要があることや、AI-OCRの読み取り処理の速さ自体は、100枚の帳票の処理を5分で終える速いものだが、正読率が低い帳票の場合はその後の修正作業に時間を取られてしまうため、迅速性のメリットを損なわない帳票設計をする必要があるといったことが挙げられている。
また操作性についても、メニューなどの項目名やメッセージが分かりづらい項目が多い帳票だと、読み取り範囲などの設定作業に時間を要して煩雑さを感じるという意見があったため、AI-OCRを導入する場合には使いやすさやサポート体制も考慮して選定する必要があるとしている。