ビジネスエンジニアリング(B-EN-G、旧称:東洋ビジネスエンジニアリング)とHTC NIPPONは2月7日、VR(仮想現実)を活用した企業向けソリューションの展開で協業すると発表した。教育研修やトレーニングを中心に、さまざまな業種での利用を見込む。
今回の協業は、B-EN-GのVR学習システム「mcframe MOTION VR-learning」とHTCのVRヘッドマウントディスプレイ(HMD)「VIVE Pro」シリーズを組み合わせたソリューションの開発やマーケティング、販売、導入支援、サポートにおよび、日本を含むアジア太平洋地域を対象としている。
mcframe MOTION VR-learningは、B-EN-Gの「mcframe IoT」シリーズの1つとして、2017年にリリースされた。360度カメラで撮影した現場空間の映像データをVR化し、映像内の対象物の説明や操作手順といったコンテンツを組み合わせることで、企業は容易にオリジナルの教材を作成できる。VRのHMDに投影することで、実際の現場に出向くことなくどこでも臨場感のあるトレーニングが行えるという。
「mcframe MOTION VR-learning」の概要
対応HMDはFoveとOculus Goで、今回の協業によってHTCのVIVE ProとVIVE Pro Eyeが加わった。mcframe MOTION VR-learningでは、HMD装着者の視線の動きをトラッキングデータとして記録、分析できるため、作成したVR教材の利用効果を確認したり、コンテンツの内容を改良したりすることに活用できるとしている。
360度カメラの映像をmcframe MOTION VR-learningでVR化すれば、HMDを装着してどこでも臨場感のあるトレーニングなどができる
mcframe MOTION VR-learningの導入実績は20社ほどで、当初は製造業のCADデータなどを使って開発中や設計途中の製品の確認や検証が主な用途だったという。しかし、この1年ほどで施設や設備の点検・保守、建設現場の作業、倉庫内の運搬操作といった業務で事前のトレーニングに活用したいと、さまざまな業種の企業から引き合いが増えているという。
HTC NIPPON 代表取締役社長の児島全克氏は、「VRはゲームなどのイメージが強く、日本ではまだだが、海外ではHMD販売の半数が法人を占めている。今回の協業により法人でのさまざまなユースケースが広がると期待しており、今後5G(第5世代移動体通信)などのテクノロジーも広がればVRの需要が高まるだろう」と語った。
B-EN-Gは、「人」にフォーカスしたソリューションの開発へ長年取り組んできたという。mcframe MOTIONシリーズも教育や学習のみならず、センサーデータから人の動きを可視化したり、製品を実際に利用する人への影響を事前に検証できるようなVRとCADを融合させる設計手法を実現したりできる。
mcframe MOTIONシリーズの展開見通し。システム構成により、学習やトレーニングに加え、製造、設計、開発、安全衛生などさまざま用途に活用できるとする
VRと並んで、現実環境に仮想空間を重ね合わせるAR(拡張現実)技術も以前から注目されているが、特に企業用途では、まだ本格的な普及段階には至っていない。B-EN-Gによれば、ARではさまざま利用シーンがあると期待される一方で、実際にキラーコンテンツとなるような用途が確立されていない点が課題だとする。また、AR/VRに使うHMDなどのデバイスもサイズや重量がまだ大きく、複雑で人の動きも多いフィールド業務の環境への本格導入には課題があると見ている。
こうした現状から同社は、利用場所が限定されないVRの活用にまずフォーカスしてソリューション開発を進めているといい、mcframe MOTION VR-learningを「安全衛生」が重要になる業務向けに展開していくとした。