新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、中国は生産を拡大しようと躍起になっている。その結果、同国にサプライチェーンを有している企業や、同国で製品を製造している企業は、未来を予想するという難題に取り組んでいる。
今日の企業はかつてないほど、自社のサプライチェーンに対する可視性を有しているのは間違いない。また企業は、機敏な対処や、先を見越した対応を採れることも間違いない。しかし、ジャストインタイム方式のサプライチェーンやアナリティクスは、突発事態に対応できるように作られてはいない。そしてコロナウイルスの感染拡大は中国国内の需要と国外への供給という双方に影響を与える滅多にない事態なのだ。
テクノロジー業界であるかどうかに関わらず、このところの決算報告時の電話会議の多くで、この不透明さが強調されていた。利益見通しは引き下げられ、売上高ガイダンスの幅は広がり、先進的なテクノロジーシステムを使っているにもかかわらず、予測の信頼性はそれほど高くない状況だ。
ここで大きな疑問が出てくる。前例のないような事態が発生した場合、人工知能(AI)や機械学習(ML)、IoT、処方的(プリスクリプティブ)アナリティクスをはじめとするさまざまなテクノロジーによって、未来を見通すことができるのだろうか?その答えはおそらくノーだろう。
早い話、現在使用されているモデルには、売上高に関する明確な情報を導き出すための変動要素があまりにも多くあるのだ。コロナウイルスの影響については、Appleも他の企業と同様に、中国に在住している自社とパートナー企業の従業員の健康状態が大きな懸念になっていると述べている。
Appleは同社の今四半期の売上高が以前の予測に届かないと述べたものの、その範囲については明らかにしなかった。Appleは、サプライチェーンに対する懸念とともに、コロナウイルスによって人々が外出を控えているなか、需要の問題も抱えている。
Appleは投資家向けの四半期ガイダンスのなかで次のように記している。
中国各地で業務は再開されようとしているが、そのペースはわれわれが予想していたよりも遅い。このため、3月期として提示した売上高ガイダンスを達成できるとは考えていない。その要因は大きく分けて2つある。
まず、世界全体に対する「iPhone」の供給に一時的な制約が課されるという点だ(中略)そして次に、中国国内におけるわれわれの製品に対する需要も影響を受けているという点だ。中国国内のわれわれの店舗すべてと、パートナー企業の店舗の多くは閉鎖を余儀なくされている。
一方、Walmartのインターナショナル最高経営責任者(CEO)Judith McKenna氏は、コロナウイルスの状況が流動的であるなか、同社の世界全体での調達網については申し分ない可視性を有していると述べている。
われわれが、グローバルソーシングを通じてこの数年間で学んだことの1つに、プロジェクトの流れとわれわれの業務との関連について、取引企業がより詳細に理解するようになったというものがある。このため、彼らはどの注文がどの工場で製造され、いつ、どのようなかたちで納品されるかを正確に把握している。そして、私はそういった過程における詳細に対する意識が、こうした流動的な状況にあっても、ものごとが明らかになるにつれ、将来にどのような影響が与えられるのかを正確に把握させてくれるようになると考えている。