われわれは自然災害地帯や重度の汚染地帯にロボットが配備される例をたびたび目にするようになってきている。福島第一原発の廃炉作業においても、ロボティクスのチームが縁の下で活躍している。
では、感染症の世界的な感染拡大と戦う上で、ロボットはどのように役に立つのだろうか?
ウイルスの感染拡大と戦うために、ロボティクスや人工知能(AI)といった破壊的技術が研究されつつある。実際のところ、少し前からロボティクス分野の多くの人々によって叫ばれてきている、遠隔医療というアイデアが、新型コロナウイルスの感染拡大によって再び注目を集めている。
筆者は、ロボティクス分野におけるインデックス(指標)やアドバイザリーを提供する調査会社ROBO Globalに連絡を取ることにした。ちなみにROBO Globalのインデックスは、遠隔医療分野を手がけるPing-An TechnologyやTeladoc Healthといった企業に光を当てている。ROBO Globalに連絡を取ったことで、筆者は同社のリサーチ部門の責任者であるJeremie Capron氏と、上級リサーチアナリストのNina Deka氏から話を聞く機会を得た。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との戦いの最前線にいるエキスパートである両氏は、興味深い洞察を語ってくれた。
——遠隔医療などに用いられるロボティクス機器は、どのような形で患者の治療や感染拡大の封じ込めに用いられるのでしょうか?
Deka氏:COVID-19によって、中国・武漢で活動する医師が不足しています。遠隔医療を使えば、医師はインターネットを通じて回診できるため、患者は離れた都市にいる医師の診察を受けられるようになります。また遠隔医療によって、患者は自宅から電話で症状を伝えられるようになるため、混雑する待合室で待つ必要もなくなり、感染症をまん延させる可能性も低くできます。「ROBO Global Healthcare Technology and Innovation ETF」(HTEC)は、Ping-AnやTeladocといった企業とともに、このテーマを前面に押し出しています。
——それはロボットの新たな利用方法なのでしょうか?
Capron氏:今日において、ロボティクス技術の病院内での主な応用はIntuitive SurgicalやGlobus Medical、Siemens Healthineers、Stryker、Medtronic、J&Jといった企業が開発した手術ロボットにとどまっています。これ自体は年間で20%を上回る成長を見せる50億ドル(約5400億円)超の市場です。しかし、病院内での利用が増えてきているロボティクス技術が他にもあります。例えば、SIASUN Robot & Automationのサービスロボットは、医療施設に訪れた患者のトリアージに用いられています。また、Aethon Roboticsなどが開発した自律型モバイルロボットは、病院内で食事やシーツ、医療機器などを運ぶために用いられています。そして、Omnicellなどの企業による、医薬品関連の自動化といった分野でもロボティクスが用いられています。