新型コロナウイルスの感染に収束する気配が見えない。こうした状況に対して、オフィスで働くホワイトワーカーはどうした対応策を講じればいいのか。
現在、注目されているのがテレワークだ。PCさえあれば、オフィスにいなくても仕事ができるテレワークの仕組みは感染症対策として確かに利用できる。
しかし、このテレワークを活用するにしても、注意すべきことがある。企業にIT活用のコンサルティングを提供するITRのシニア・アナリストの舘野真人氏は「多くの企業で採用されているテレワーク制度は、オフィスに従業員全員が出社しないことを前提にしたものにはなっていない」と解説する。
これまで注目されてきたテレワークは、働き方改革の一環として生産性を高めることを目的としたものである。そこに、今夏の東京五輪対策として、首都圏に拠点を置く企業では、公共交通網の混雑や渋滞を地域を挙げて緩和するという目的が加わった。これらはいずれも、どこでもいつでも働ける環境づくりを念頭に置いている。
ITR 取締役 シニア・アナリスト 舘野真人氏
「ただし、現在の新型コロナウイルス対策で求められるのは、とにもかくにも感染拡大の防止であり、それはまさにBCP(事業継続計画)の領分だ。オフィスに誰も出社できなくなることを想定したテレワーク制度を整備できている企業は多くないのではないか」(舘野氏)
日本も含めて世界規模で進行していると言える新型コロナウイルスの感染が今後、どこまで拡大するのか全く見通すことはできない。電通は2月25日に従業員が検査で陽性であることが確認されたとし、2月26日から汐留の本社ビルの全従業員に原則テレワークを命じている。つまり、オフィスの閉鎖である。
「オフィスに出社できない、という状況下でのテレワークは、従業員の何分の一かがリモートで仕事ができればよいという状況とは大きく異なる。そもそもそれで業務が回るのかを見極める必要があるし、細かいところでは顧客からの電話をどう取り次ぐのか、自宅のICT環境は十分か、VPNなどのリモートアクセスの同時接続数は十分か、といった確認が必要になる」(舘野氏)
新型コロナウイルス対応では、感染症拡大という状況を踏まえた事業継続性の維持を念頭において検討、行動すべきである。