新型コロナウイルスの感染拡大は、仕事の進め方の進化をスピードアップさせ、カンファレンス、コラボレーション、営業、オフィスの不動産のあり方に至るまで、あらゆるものの再検討を迫っている。その結果、いくつかの業界は一変するかもしれない。
中国は都市封鎖や、学校や事業所の閉鎖によってコロナウイルスと戦った。それによって起きたサプライチェーンの乱れはまだ回復しておらず、2月の最終週には、業績予想を下方修正する企業が相次いだ。一方で、米国の疾病対策センター(CDC)は、米国内で隔離やその他の対策を実施する可能性が高いと述べている。国外出張やカンファレンスへの参加が抑制されていることも、航空会社やレストラン、小売店など、さまざまな業界に影響を与えている。
しかし俯瞰的に見れば、コロナウイルスの恐怖は、すでに進んでいる変化を加速するものになるかもしれない。コラボレーションはビデオ会議を利用することが増えた。出張を禁止することで、企業が会食のための国外出張は経済的に見合わないことに気づき、営業やマーケティングの慣行が変わるかもしれない。また、仮にほとんどの労働者が生産性を低下させることなく自宅で働けると分かれば、オフィスの不動産のコストを正当化することは難しくなるだろう。
つまり、コロナウイルスの恐怖は、より優れた働き方を見せてくれることになるかもしれない。企業がどのようにコロナウイルスや働き方の変化に対応していくかはまだ見えていないかもしれないが、明らかなことが1つある。コロナウイルスは、ビジネスの定義を変える可能性が高いということだ。
考慮しておくべき事柄をいくつか挙げてみよう。
- 2月初旬にニューヨークで開催された米人工知能学会(Association for the Advancement of Artificial Intelligence:AAAI)のカンファレンスでは、渡航制限のために、多くの中国の研究者が、遠隔会議システムで発表を行うか、あらかじめ録画されたプレゼンテーションを送っていた。AAAIカンファレンスは、実際に開催できたという意味では幸運だった。例年注目を集めるカンファレンスであるFacebookの「F8」や、「Mobile World Congress」(MWC)は中止になっている。将来はビデオカンファレンスが主流になるのかもしれない。
- 中国で消費者の行動はすでに変化しており、元には戻らない可能性がある。ほかの地域でも同様のことが起こるかもしれない。Alibabaの最高経営責任者(CEO)である張勇氏は、次のように述べている。
「17年前に重症急性呼吸器症候群(SARS)を経験したあと、eコマースビジネスは驚異的な成長を遂げた。私たちは、逆境の後には消費者や企業の行動に変化が現れ、それがチャンスをもたらすと考えている。われわれは、日常生活のニーズや労働に必要な条件を、デジタル的な手段で賄うことに慣れた消費者が増加しているのを見てきた。私たちは、進みつつある中国の経済と社会のデジタル化を信じており、今後Alibabaのデジタル経済の長期的な成長を支える基礎を構築する機会が訪れると考えている」