愛知県の新城市民病院で、次世代型病院(スマートホスピタル構想)の実現に向けた新たな運用・管理システムの実証実験が進められている。新城市民病院と名古屋大学医学部附属病院メディカルITセンター、大成建設、NTTドコモ、シスコシステムズが共同発表した。
この取り組みは、病院業務の効率化と医療の安全およびサービス向上の目的にしているという。各機関では、IoTを活用して病院のスタッフや患者の位置情報、患者の身体状況などを可視化、閲覧できる運用管理システムを構築している。背景には、少子高齢化や医療従事者の不足の深刻化がある。医療施設では、特に夜間を小人数対応せざるを得ず、患者の無断外出や転倒といった重大事故につながるなどのリスクがあり、未然に防止する施策が必要だという。
実証実験では、新城市民病院の一部病棟の特定フロアや1階出入口付近に、シスコが提供したメッシュWi-FiネットワークやIoTゲートウェイ機器を設置。病院スタッフや患者に装着したリストバンド型のウェアラブル端末やICタグなどで位置情報や心拍数、歩数などのバイタルデータを取得する。これら機器からBLE(Bluetooth Low Energy:低消費電力型無線通信)の通信電波とネットワークルーターを介してドコモの通信回線からクラウド上のプラットフォームなどに各種データを送り、プラットフォームなどに集約、蓄積する。
システム構成イメージ
検証では、ウェアラブルデバイスから受信した電波を演算して正確な現在位置を推定し、指定した日付や時間帯での移動軌跡、滞在場所や時間を対象者ごとに区分した色のグラデーションで表示することにより、病院スタッフや患者の所在、動線を可視化する。また、患者のバイタルデータをもとにその履歴や指定時間/日付/期間単位での可視化、他者との活動状態の比較表示をできるようにする。
動線の可視化イメージ
この他に、ウェブアプリケーションで各種デバイスからさまざまな情報を閲覧したり、病院スタッフに通知したりできるようにしている。
期間は2019年12月から2020年9月までの予定で、各機関では実証実験から得たノウハウをもとに、より実用的な運用管理システムの構築を目指していく。