NECとカゴメは3月31日、戦略的パートナーシップを契約して、4月に欧州のトマトの1次原料加工メーカー向けに人工知能(AI)を利用した営農支援事業を開始すると発表した。
営農支援事業では、NECの農業向けIT/通信基盤「CropScope」を使い、センサーや衛星写真からトマトの生育状況や土壌の状態を可視化するサービスを提供するほか、AIを活用した営農のアドバイスを行うサービスを販売する。AIには、熟練栽培者のノウハウを習得させている。
ビジネスモデルのイメージ
これによりAIが、トマト農家などに水や肥料の最適な量と投入時期を指示してくれる。農家の栽培の巧拙に左右されることなく、収穫量の安定化と栽培コストの低減を実現でき、地球環境にも配慮した持続可能な農業を実践できるとする。トマトの1次加工品メーカーでも、自社圃(ほ)場や契約農家の圃場におけるトマトの生育状況を網羅的に把握でき、データに基づいた全体最適での収穫調整が可能になり、生産性を向上できるという。
AIを用いた可視化イメージ
両社によれば、加工用トマトの生産は新興国を中心に拡大が見込まれる一方、持続可能な栽培には生産者の減少や環境負荷の低減などの課題がある。そのため2015年から営農アドバイスの検証を進め、2019年までポルトガルやオーストラリア、米国などで実証を重ねてきた。ポルトガル実証試験では、窒素肥料が一般平均量より約20%少ない投入量でもポルトガルの全農家の平均収量より約1.3倍多い、1ヘクタール当たり127トンを収穫した。これは熟練栽培者による栽培とほぼ同等の結果だとしている。
これら成果を踏まえてサービスの事業化のめどが立ったとし、カゴメは4月に「スマートアグリ事業部」を新設する。当初は欧州で事業展開し、将来的に日本での実用化も視野に入れる。2020年は国内でも複数の産地で事業展開の検証を行う。