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SAPジャパンの鈴木社長に聞く、アフターコロナの世界とDXの行方

國谷武史 (編集部)

2020-04-30 06:00

 4月1日付でSAPジャパン 代表取締役社長に就任した鈴木洋史氏は、新型コロナウイルス感染症の世界的な脅威の中で、日本企業は抜本的に変わらざるを得ないと語る。未曾有の状況が続く市場でのビジネスやデジタルトランスフォーメーション(DX)がどうなっていくのだろうか。鈴木氏に現状と展望を尋ねた。

--2月19日の社長就任前会見からこれまでに世界の情勢は一変しました。SAPの状況はいかがでしょうか。

SAPジャパン 代表取締役社長の鈴木洋史氏。オンラインでインタビューに応じた
SAPジャパン 代表取締役社長の鈴木洋史氏。オンラインでインタビューに応じた

 記者会見をした時点では、誰もこのような状況を全く予想していなかったと思います。会見の後、SAPジャパン社内に危機管理チームを立ち上げ、社員にさまざまなガイダンスを提供してきました。まず社員や家族の安全と健康の確保に取り組み、パンデミックが拡大した3月からはSAPグローバルと日本法人が持つ仕組みを生かし、社会に対して何ができるかを議論し、さまざまな取り組みや働きかけをしています。

 例えば、EYおよびクアルトリクスと連携して政府機関向けに感染が疑われる人のスクリーニングのための仕組みや医療従事者向けのサポートなどのソリューションを提供しています。オーストラリアでは政府と陽性者の状態を把握する仕組みも構築していますし、まさに日本を含めて世界各地でさまざまな取り組みを進めているところです。

 2020年第1四半期(2020年1~3月)のグローバルの業績は、クラウドの売上高がIFRS(国際財務報告基準)で前年同期比29%増と非常に伸び、総売上高も7%増と堅調な結果で終えることができました。SAPジャパンの総売上高はグローバルの2倍以上の成長を達成しています。世界でも日本でもSAPのさまざまなクラウドソリューションをお客さまにご採用いただいており、ソフトウェアのビジネスも堅調でした。

 2020年度が始まり日本企業では以前から予定されていた幾つかのプロジェクトが開始されているものの、(4月7日の)緊急事態宣言後の現在は、かつてのようにお客さま先に常駐してプロジェクトを進めることができなくなりました。SAPジャパンに在籍する約1000人のうち400人ほどが導入プロジェクトを担当していますが、ほぼ全員がテレワークを行っています。一部のプロジェクトは若干の遅れが出始めています。

 お客さまも新型コロナウイルスの影響を注視したいとして、予定していた投資をいったん見送ったり適宜実行を判断したりするところが増えていますから、2020年第2四半期(2020年4~6月)の業績にインパクトを与えます。これはSAPに限らず世界中の企業も同様でしょう。

--具体的にどのような影響が出ていますか。

 業種によって違いますが、特に自動車産業は大きなブレーキを踏まざるを得ず、サービス業全体も厳しい状況にあると感じています。短期的な業績への影響は避けられませんが、それでも通期の見通しは現在ほど大きな影響にはならないと予想しています。企業のDXに向けた投資や取り組みは止まっていませんから、2020年も後半で盛り返すと考えています。

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