新型コロナウイルス感染症の拡大による被害が深刻さを増す中で、1つのジレンマが生じている。人々の行動を規制するに当たり、人の命を守るのか、プライバシーを重視するのかという議論である。諸外国の政策を見ると、人の命には代えられないという前提であることが分かる。
欧米などでは「都市封鎖(ロックダウン)」という形で、強制力の強い手法を用いて取り締まっている。韓国では、新型コロナ感染者の感染までの行動履歴を、監視カメラやスマートフォンのGPS、クレジットカード決済記録などの調査をもとにして匿名で公開しているという。
日本でも強制力への限界が指摘されているものの、緊急事態宣言を発動し、規制を実施している。今後、もし新型コロナウイルス問題が解消したとしても、再発の懸念から、これまで以上に経済や人の行動を把握し、それを人の生命の安全確保につながる仕組みに組み込んでいくと考えられる。
その際にテクノロジーとして鍵を握るのがGPSだ。既に携帯電話だけでなく、電力網や銀行、旅客機、株式市場のネットワークはGPSに依存している。今後はさらに、スマートシティなどにGPSが深く組み込まれていく見込みだ。
一方でGPSにはセキュリティ面の課題が指摘されている。GPSへの依存度が高まる中で、ハッカーがここに侵入し、時刻調整を狂わせるといったサイバー攻撃は、それほど難しくないという。多くの国では、バックアップシステムを保有しているが、米国は持たないとされている。
ハッキングの方法は2種類。GPSの電波を妨害するジャミングと、GPS衛星が送信する個別の識別コードを偽装するスプーフィングである。仮に、株式取引時間中に時刻を管理するGPS受信機にエラーが起きれば、金融業界の業務が大きく混乱すると、米国証券会社のネットワークサービス担当者は話しているという。
新型コロナウイルス問題で世界が混乱する中で、今後の世界の仕組みの鍵を握るGPSについて、その役割とリスクを示す記事を集めた。