本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、シスコシステムズ 代表執行役員社長のDave West氏と、SAPジャパン バイスプレジデントの首藤聡一郎氏の発言を紹介する。
「急拡大する日本のテレワークを支えたい」
(シスコシステムズ 代表執行役員社長のDave West氏)
シスコシステムズ代表執行役員社長のDave West氏
シスコシステムズは先頃、事業継続とアプリケーション運用施策についてオンライン形式で記者説明会を開いた。West氏の冒頭の発言は、その会見および同氏の最近のブログから、新型コロナウイルス感染症の拡大に対応した取り組みへの姿勢を一言で表したものである。
会見でのアプリケーション運用施策についての内容は関連記事をご覧いただくとして、ここではコロナ危機に向けた事業継続を踏まえた形で、冒頭の発言に注目したい。
West氏は会見で、最初に図を示しながら「事業継続を実行する上で今や非常に重要な存在になっているのが、ビジネスアプリケーションだ。アプリケーションによって、日本では急速にデジタルシフトが起きている」と説明。その代表的な分野として、「テレワーク」「遠隔教育」「遠隔医療」の3つを挙げた。
リモートワークの代表的な3つの分野(出典:シスコシステムズの資料)
この3分野のピックアップに驚きはないが、筆者が少々気になったのは「Business Continuity Execution(BCE)」という言葉だ。BCP(PはPlan)やBCM(MはManagement)という言葉はあるが、BCEは初めて聞いた。「事業継続の実行」という直接的な表現だけなのかもしれないが、今後のキーワードになる可能性もあるので書き留めておきたい。
West氏は3分野の中でも特にテレワークについて、自身のブログでコロナ危機の状況下を踏まえて次のように述べている。
「現在、日本を含めた世界各国が、前例のない戦いを続けている。この状況下において、テレワークは私たち企業や組織が事業を継続しつつ、従業員や家族、お客さま、社会の安全を確保するために非常に有効な手段だ。テレワークはもはや一部の従業員の利便性向上や福利厚生のためだけでなく、全ての組織にとってビジネス上、不可欠なものとなった」
こうした事態に対し、シスコでは企業のBCPへの取り組みを支援するため、この2月から同社のテレワークソリューション「Webex」を90日間、ユーザー数無制限で利用できる無償支援プログラムを実施している。Webexはクラウド上でのリアルタイムなコミュニケーションを可能とするウェブ会議システムで、競合製品である「Zoom」や「Microsoft Teams」などとともに、現在、利用が爆発的に拡大している。
West氏は同じブログで、「シスコは長年、『人々の仕事、生活、遊び、学習の方法を変える』というビジョンの下、活動してきた。今般の状況下においても、お客さまの事業継続や働き方の変革を支援することで、日本がこの困難を乗り越え、社会が発展していくことに貢献したい」とも。冒頭の発言はこのブログのタイトルから取ったものだ。同氏の強い意思を感じる一言である。