米IBMは5月5~6日、オンラインでグローバルイベント「Think Digital Event Experience」を開催した。4月にIBM社長に就任した元Red HatのCEO(最高経営責任者)、Jim Whitehurst氏が基調講演を行い、ハイブリッドクラウドの拡張としてのエッジ戦略を打ち出した。
IBMは、クラウド時代に向けて2013年にIaaSのSoftLayerを買収、2019年にはRed Hatを買収してコンテナー技術を手に入れ、ハイブリッドクラウド戦略を大きく進めた。
IBM プレジデントのJim Whitehurst氏
Whitehurst氏は、コロナ禍においてITのアーキテクチャーがますます重要になっている、とし、「予測できない将来に向けて企業が準備できることは1つしかない--単一のオープンなアーキテクチャーを持つこと」と述べた。新しい技術を取り入れたり、新しい働き方を可能にしたり、データを洞察に変えるためには、ワークロードを必要なところに、必要な時に動かすことができるためのITアーキテクチャーが必要だとする。
今回のイベントでIBMは、ハイブリッドクラウドと人工知能(AI)に加えて、「エッジ」というキーワードを掲げた。直前の基調講演では新CEOのArvind Krishna氏が、「5Gとエッジコンピューティングの時代がやってくる。ここでの勝者は、オープンな技術、標準をベースとしたハイブリッドクラウドアプローチを受け入れたところになる」と述べている。
Whitehurst氏はエッジ戦略を語るにあたって、「ハイブリッドクラウドの定義を拡大したい」と切り出した。そして、小型デバイス、工場のフロア、高速道路システム、空港などを例に挙げ、「パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスデータセンターを超えて考える必要がある。ワークロードはネットワークのエッジでも生まれている」と述べた。
エッジのワークロードに対しても、データの保存と保護、AIと自動化による分析とそれを受けてのアクションをとる仕組みが必要で、全体のオーケストレーションと相互運用性が求められる。「小さなクラウドのように運営しなければならない」とWhitehurst氏はいう。
エッジへの拡大とともにIBMは会期中、「IBM Edge Application Manager」「IBM Telco Network Cloud Manager」の2製品を発表した。
IBM Edge Application Managerは、AI、アナリティクス、IoTのワークロードを実装し、遠隔から管理できる自律型管理ソリューション。単一の管理者が最大1万件のエッジデバイスを同時管理できるという。
IBM Telco Network Cloud ManagerはIBMとRed Hatの共同ソリューションだ。「Red Hat OpenShift」をベースとすることで、仮想化やコンテナー化された通信分野に固有のワークロードのオーケストレーションや自動化が可能になる。「最大80%のコストと工数削減も可能」とWhitehurst氏は説明する。
IBMは、エッジコンピューティングと通信事業者のクラウドを専門とするIBM Servicesチームも立ち上げたほか、「IBM Edge Ecosystem」「IBM Telco Network Cloud Ecosystem」として、IBMの技術を利用してエッジコンピューティグ、通信事業者向けのクラウド向けのソリューションを開発するISVなどで構成されるプログラムも発足させた。