想像してみていただきたい。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴って2020年4月に発令された政府の緊急事態宣言が5月25日に全国で解除され、日々の生活が少しずつ落ち着きを取り戻し始め(本来は東京オリンピック・パラリンピックの大成功を体験するはずだったのだが)、オフィスへの出社や、対面での営業、部分的な旅行や、必要最低限の海外出張などが可能となってくる中で、COVID-19を経た社会は、全く元通りに戻るであろうか。
- 「上顧客はまた店舗に足しげく通ってくれるだろうか?」
- 「スマートフォンの機種変更をしにショップに相談に来るだろうか?」
- 「大規模な立食イベントでブッフェを囲んで商談会が行われるだろうか?」
- 「コールセンターの従業員は、引き続き今の職場環境にモチベーション高く出社してきてくれるだろうか?」
- 「銀行口座振替、金融商品の追加購入などに、今まで通り銀行の支店へ行くだろうか?」
答はいずれも「難しい」なのではないか。COIVD-19の危機は、われわれに、あいさつの仕方から、働き方、情報の調べ方、営業の仕方、購買の仕方など、さまざまな面で根本的に行動様式、カルチャーの変容を迫っている。それらに対して企業は、顧客・従業員・社会の声に耳を傾け、”変革”していくことが求められている。そして、将来の新しい世界観、「ニューノーマル」を自社なりに見据え、企業理念・Purposeに基づいた変革へのロードマップを描きながら、具体的なアクションの実行が進み始めていると感じている。
下記のような企業の有事への取り組みや動向が共有される中、改めて各社・各人のニューノーマルを考えるきっかけとなっているのではないかと考える。
図1.COVID-19に対する国内外企業の取り組み例(2020年5月10日時点)
一方、消費者にはどのような変化が見られたのであろうか。Adobe Systemsが発行した「2020 Digital Economy Index」によると、米国ではeコマースの売り上げが49%増(4月1~23日と3月1~11日を比較)しており、特に食料品は110%増になっている。感染者急増により、3月下旬からの外出禁止令が起因していると考えられる。
日本国内に目を転じると、日常的にeコマースを利用しているとされる20~30代よりも、高年齢層における増加が著しく、自らの身を守るためにeコマースを活用するという消費行動の変化が見られる(三井住友カード調べ)。また、決済方法については、COIVD-19によって、約2割の人が支払い方法に変化があり、「接触を避けたい」「ネット通販が増えた」などの理由から「現金」の利用が減少し、「スマホ決済」の利用は増加する傾向にある(MMD総研調べ)。
企業のリーダーは、COIVD-19危機に立ちすくむのではなく、この難局や消費者の行動変容を”変革の好機”と捉え、顧客や従業員の健康・安全という新たなアジェンダを取り込みながら、企業の社会的存在意義・顧客への提供価値を高めていく変革を断行していくことが求められると考えている。