米国の半導体業界が連邦政府に対して支援の拡大を求めている中、AMDの最高経営責任者(CEO)Lisa Su氏は先週、最近見られる「考え方の変化」が、以前から業界が目指していた目標の達成を後押しする可能性があると発言した。この発言の前には、米半導体工業会(SIA)が連邦政府に対して、特に国内生産の強化のために、業界を支援する取り組みへの約370億ドル(約4兆円)規模の助成金の支出を求めていると報じられたばかりだった。
Su氏は、SIAの会員の立場から、「私たちは米国における国内生産の話題に多くの時間を費やしてきた」と述べた。「これはより大きな話の一環であり、実際には、技術分野における米国の主導権の問題だ」
Su氏は、北バージニア技術評議会と全米民生技術協会が主催したウェブチャットで、「米国は技術分野、ハイパフォーマンスコンピューティングの分野で主導的立場にあり、私たちの目標は、その主導権を維持することだ」と発言し、「それにはサプライチェーンの確保が必要となる」と続けた。
同氏は、米国政府は国内生産を支援するのに加え、新たな研究者の育成や、「最先端の研究開発」についても継続して支援していくべきだと語った。「米国のこれまでの道のりを考えてみてほしい。次世代のテクノロジー業界のリーダーを育てる訓練場となっているのは大学だ」と同氏は述べた。
The Wall Street Journalによれば、SIAは連邦政府に対して、製造拠点の誘致に対して150億ドル、公的部門と民間部門の共同で運営される新たな半導体工場の建設に対して50億ドルの包括的助成金を州政府に対して交付することを求める提案書の草案を作成した。また同団体は、連邦の研究費に170億ドル、基礎研究と応用研究に100億ドル、新たなテクノロジーセンターに50億ドルの投資を求めていると報じられている。
「半導体業界はこれまでも、こうした問題について長い間検討を続けてきた」とSu氏は述べている。「半導体業界における主導権の重要性は、以前よりもより一層明確になってきている。私はまた、人々のサプライチェーンに対する理解に、新たな見方が出てきていると考えている。このことは以前から議題になってはいたが、考え方に多少の変化が出てきた」
SIAによれば、米国の半導体業界は世界シェアの半分近くを握っており、同団体は米国の半導体業界の95%を代表しているという。米国の半導体メーカーの製品は、半分近くが米国内で生産されている。
しかし同時に、他の国々も半導体の生産能力拡大に投資している。
SIAのCEOであるJohn Neuffer氏は最近、新聞の論説記事で、「例えば中国政府は、半導体技術や、人工知能(AI)や量子コンピューティングなどの半導体が重要な役割を果たす分野で米国に追いつくために、向こう10年間で1000億ドル以上を投資すると発表している」と述べている。「それらの未来の技術で勝利するのは半導体技術をリードする国であり、社会的にも、経済的にも、安全保障面でも大きなメリットを受ける」
新型コロナウイルスの感染拡大は、米国のテクノロジー業界がグローバルサプライチェーンに依存していることを浮き彫りにしたが、そのことが、米国政府とIntelをはじめとする大手半導体メーカーとの間で、半導体の生産に関する議論を増やす契機になっている。
5月には、台湾のTSMCが、連邦政府の支援を受けて、アリゾナ州に120億ドル(約1兆3000億円)規模の生産拠点を設ける計画を発表した。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。