McKinseyが新たに発表した調査レポートで、今後欧州では自動化技術によって5100万人の雇用が失われる可能性があり、今の仕事の中で新しいスキルを身に着ける必要がある労働者は、9000万人以上に達する(これは欧州の全労働者の約40%にあたる)と警告している。
また、テクノロジーによって仕事のあり方が変わるにつれて、現在の欧州の労働者は、ほぼ全員がある程度の変化に直面するという。一見すると、これらの数字は「ロボットによって人間の仕事が奪われる」という(よくある)主張を裏付ける材料のように見えるが、そのような結論を出すのは早計だ。調査によれば、失われる雇用の大部分は、他の分野における雇用の増大で埋め合わせられることになるとみられる。
McKinseyは、テクノロジーなどの新しい分野で新たな雇用機会が生まれる一方、欧州では、今後新たに生まれる仕事の求人に、その仕事に必要なスキルを備えた労働者を見つけることは難しくなると予想している。同社はパンデミック前の時点で、2030年までに欧州で600万人の労働者が不足する事態になる可能性があると分析していた。
この現象は、求人は集中するが、それらの求人に必要な能力を持つ住人が足りないロンドンやパリのような巨大都市に特に顕著に現れる。前述のレポートによれば、それらの成長分野では、新しく生じる求人のうち、適切なスキルを持った労働者を採用できるのは60%未満だという。
つまり今後は、ビジネスリーダーの最優先課題に、労働者のスキルアップや再訓練が躍り出ることになる。この傾向は、新型コロナウイルスの感染拡大によってさらに加速している。レポートによれば、自動化技術によってなくなる可能性が高い仕事の多くは、パンデミックの影響が大きい仕事でもある。
自動化と新型コロナウイルスの両方の影響を受ける可能性がもっとも高い分野は、カスタマーサービスおよび営業、フードサービス、建設業などだ。
今後はこれらの分野の労働者に、成長分野に転職できるスキルを身に着けさせることが重要になる。レポートの著者であるSusan Lund氏は、米ZDNetの取材に対して、「本調査では、欧州で現在行われている転職の多くは、小売店のレジ係などの衰退しつつある職業から、別の衰退しつつある職業への転職であることが明らかになった」と述べている。
「重要なのは、自動化技術によって衰退しつつある職業に就いている人々が、上り調子の職業で必要とされるスキルを身に着けようとすることだ」とLund氏は言う。「キャリアアップに役立つ、いわゆるスキルの『隣接性』は確かに存在する」
提供:McKinsey
では、「上り調子の職業」が見られるのはどの分野だろうか。一般的に言えば、そして長期的な傾向から言っても、製造業や農業のウエイトは、サービス業よりも小さくなっている。McKinseyはより具体的に、2030年までにもっとも大きな成長が見込まれるのは健康分野や社会福祉分野で、プロフェッショナル/科学/技術サービス分野と教育分野がそれに続くと予想している。
Lund氏は、これはよいことだと述べている。退屈なルーチンワークよりも、問題解決や人間同士のコミュニケーションを伴う、より興味深い仕事が増えていくという。Lund氏は、もし今15歳の人に対して、高校や大学でどんなスキルを身に着けるべきかをアドバイスをするとしたら、STEM教育(科学・技術・工学・数学)の分野のスキルを勧めるが、有益なスキルはそれだけではないと述べている。