小売業者が実店舗と倉庫の両方に人工知能(AI)とロボットを導入することが増えており、ロボット労働力には新たな管理手法が必要になっている。
近い将来には、人間の従業員を管理する人事管理部門だけでなく、人間以外の労働力の面倒を見るロボット管理部門も必要になるかもしれない。
Gartnerによれば、早ければ2025年にはロボット管理部門が出現する可能性があるという。Gartnerのアナリストは、今後5年間のうちに、世界でトップ10の小売業者のうち少なくとも2社で、人事部門を改編してロボット従業員の管理に対応しなければならなくなると予想している。
この部門は、AIの休暇やロボットの退職パーティーについて考えるわけではない。ロボット管理部門に求められるのは、ロボットの調達やメンテナンス、トレーニング、税務、老朽化した機材の使用停止や廃棄などだ。
特に小売業界にはAIを搭載したロボットが適しており、Gartnerの調査では、小売業者の77%が2021年までにAIを導入する計画だと予想している。結果が出やすい分野は、フロアの掃除やデータ収集、警備などだと考えられるが、Gartnerが第1のユースケースだとしているのは、倉庫におけるピッキング作業だ。
大手小売業者はすでに、倉庫でのAIとロボットを大規模に利用することの有用性を証明している。例えばWalmartは最近、同社がニューハンプシャー州に持っている2万平方フィート(約1860平方メートル)の倉庫に、ロボットで効率的なピッキングを可能にする「Alphabot」を導入したことを明らかにした。このシステムは、人間の労働者とロボットを組み合わせることで、1時間あたり800製品をピッキングできるという。
同様に、米国の大手小売業者であるKrogerは2018年に英国のネットスーパーOcadoと、自動化された巨大なロボット倉庫を建設する契約を結んだ。この倉庫では、食洗機ほどのサイズのロボットが1つの群れのように働いて、注文商品をピッキングして人間の従業員に引き渡し、人間の従業員が箱詰めを行う。
小売業者のロボットに対する関心が高まっているのは、顧客から正確さとスピードの両立を求められているためだ。Gartnerのシニア調査ディレクターKelsie Marian氏は、「小売業界は、顧客体験が新たな通貨のようになる、前例のない変化の時代を迎えており、今後も変革が起き続けるだろう」と述べている。