Hewlett Packard Enterprise(HPE)は6月23日、年次カンファレンス「HPE Discover 2020」をオンラインで開催した。基調講演でCEO(最高経営責任者)のAntonio Neri氏は、新型コロナウイルス感染症からの学びとして、「データをすぐに活用することがさらに重要になる」として、「インサイト(洞察)の時代」の到来を告げた。
「情報の時代は終わった」
自宅から出演したNeri氏は、まずコロナ禍の話を切り出し、「新型コロナウイルス以前に未来の話として語っていたことがいきなり現実になった」と述べた。企業や組織は、どこからでも仕事ができる環境をすぐに整備する必要があった。HPEがとった対策は、従業員の安全確保に加え、顧客には柔軟性のある財務サービスを用意した。また、イタリアの病院でネットワークを寄贈し、新型コロナウイルス感染症のラボを立ち上げたり、米アーカンソー州の学校の駐車場にインターネットアクセスポイントを用意して学生にeラーニング環境を整えたりするなどことを実施したという。
HPEはイタリアで新型コロナウイルスの検査ができる施設を立ち上げた
「エッジからクラウドのプラットフォームを構築しアズ・ア・サービスで提供するというHPEの戦略が現在そして将来も正しい方向性にあるといえる」とNeri氏。「3年前に将来のエンタープライズはエッジ中心、クラウド対応、データドリブンになると予想したが、いま現実になった」と続けた。
Neri氏は、2018年にCEOに就任し、その年のDiscoverでは4年間で40億ドルをエッジ領域に投資すると約束、2019年のDiscoverでは「2022年までに全てをアズ・ア・サービスとして提供する」と発表していた。
コロナ禍からの学びは、「データの活用」だ。コロナ禍で、多くの政府機関が表計算シートをやりとりして作業していたとし、「この10年、技術に投資してきたが、接続されていないデータがたくさんある。研究者らはデータの量に圧倒されており、情報からインサイト(洞察)を得て、アクションを起こすことはできずにいる」と続ける。
HPEのCEO、Antonio Neri氏。新型コロナウイルスの検査で陽性となったことを発表していた。「もう元気になった。だが、このウイルスは本当に深刻だ」とコメント
Neri氏は、データの生成と収集に終始していたこれまでを”情報の時代”とした上で、「情報の時代が終わりを迎えつつある」と述べた。「これからの10年は、洞察と発見の時代だ。データから得た洞察や発見を共有して活用する。われわれは『洞察の時代』に入りつつある」
洞察の時代に向けてHPEは、エッジからクラウドまでのプラットフォームと、その上で全てのデータを接続、保護、分析してアクションするシステムが必要だと説く。そのためには、「オープンソースのクラウドネイティブ技術上でアプリケーションを構築し、高度に分散されたインフラモデル上で最適化する必要がある。これにより、制限や拘束なくデータを動かすことができ、アジリティー(俊敏さ)を得られる」(Neri氏)という。
一方で、「パブリッククラウドが台頭して10年になるが、データとアプリケーションの70%がパブリッククラウドの外にある」と述べ、クラウドとオンプレミスの2つのモードでオペレーションするのでは俊敏さを得られず、高いコストになるとも指摘した。
「デジタルトランスフォーメーションの次の波では、クラウドファーストから『クラウドがどこにでも(everywhere)』にシフトするだろう」と予言した。