松岡功の「今週の明言」

富士通の人事部門トップが働き方改革に向けて発した「3つの刺激的な発言」

松岡功

2020-07-10 10:38

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、富士通 執行役員常務の平松浩樹氏と、日本HP専務執行役員の九嶋俊一氏の発言を紹介する。

「適材適所ではなく“適所適材”を実現する」
(富士通 執行役員常務の平松浩樹氏)

富士通 執行役員常務の平松浩樹氏
富士通 執行役員常務の平松浩樹氏

 富士通は先頃、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって生じるニューノーマル(新常態)に向けた新たな働き方として「Work Life Shift」を推進すると発表した。同社の執行役員常務で総務・人事本部長を務める平松氏の冒頭の発言は、オンライン形式でのその発表会見で、新たな働き方を支える「ジョブ型」人事制度のポイントを端的に表したものである。

 Work Life Shiftは、「働く」ということだけでなく、「仕事」と「生活」をトータルにシフトし、Well-being(健康・幸福)を実現するコンセプトだ。これに基づき、固定的なオフィスに出勤する従来の通勤の概念を変え、多様な人材が高い自律性と相互の信頼に基づき、場所や時間にとらわれることなく顧客への提供価値の創造と自らの変革に継続的に取り組むことができる働き方を実現するため、人事制度とオフィス環境整備の両面からさまざまな施策を推進する構えだ。

 詳しい内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは印象深かった平松氏の刺激的な発言を3つ取り上げておきたい。

 1つ目は、「通勤という概念をなくす」。先にも少し触れたが、勤務形態はテレワークを基本とし、業務の内容や目的、ライフスタイルに応じて時間や場所をフレキシブルに活用できる最適な働き方を実現する。これにより、通勤定期代の支給も廃止するという。

 2つ目は、「現状のオフィス規模をこれから3年かけて50%程度に見直す」。社員がそれぞれの業務目的に最も適した場所から自由に選択できるようにするとともに、全席をフリーアドレス化することにより、2022年度末までにオフィスの規模を現状の50%程度に最適化し、快適で創造性のあるオフィス環境を構築するとしている。

 そして3つ目は、冒頭で紹介した「適材適所ではなく“適所適材”を実現する」。富士通が標榜している「IT企業からDX(デジタル変革)企業への変革」を実現する人事制度として取り組み始めているジョブ型雇用の話だ。図に示したのがその内容である。

ジョブ型人事制度について(出典:富士通の資料)
ジョブ型人事制度について(出典:富士通の資料)

 とりわけ重要なのが、図の一番目に挙がっている「果たすべき職責(役割、求められるスキル、行動など)の明確化と評価」だ。これがぼやけていると社員の納得が得られず、ジョブ型人事制度は成り立たなくなる。

 このテーマについての筆者の見解は、2020年6月25日掲載の「一言もの申す」連載「『ジョブ型』働き方改革の実効へ『年俸制』を導入せよ」で述べているのでご参照いただきたい。そのタイトルにも表記している通り、ジョブ型雇用を実施するなら、これを機に「年俸制」を導入してはどうか、というのが筆者の提案である。本稿でも改めて訴えておきたい。

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