「日本はリモートワークの経験値が低かった」--アトラシアン調査

渡邉利和

2020-10-23 11:32

 アトラシアンは10月22日、日本を含む5カ国を対象に実施したリモートワークに関する調査レポート「働くを再創造する『どこでも働ける勤務形態』を考える(Reworking Work: Understanding The Rise of Work Anywhere)」を発表した。日本、オーストラリア、フランス、ドイツ、米国の5カ国で企業に勤務する5000人以上を対象に、リモートワークに対する従業員の意識、自宅における働く環境、企業文化などについて調査したもの。

Atlassian ワーク・フューチャリストのDominic Price氏(左)とアトラシアン 代表取締役社長のStuart Harrington氏
Atlassian ワーク・フューチャリストのDominic Price氏(左)とアトラシアン 代表取締役社長のStuart Harrington氏
今回の調査の概要。同社がオフィスを構える5カ国で、かつ国ごとの違いが顕著に現われるように選定したという。なお、調査は今回限りではなく、今後も定点観測的に変化を追跡していく予定だという
今回の調査の概要。同社がオフィスを構える5カ国で、かつ国ごとの違いが顕著に現われるように選定したという。なお、調査は今回限りではなく、今後も定点観測的に変化を追跡していく予定だという

 豪Atlassian ワーク・フューチャリストのDominic Price氏は、まず自身の職務について「私はAtlassianのワーク・フューチャリストとして“未来の働き方(Future of Work)にフォーカス”しており、これは世界でも最も素晴らしい仕事ではないかと考えている」と説明した上で、自社について簡単に説明した。

 同社は全世界8カ国に5000人の従業員を擁し、“あらゆるチームのポテンシャルを解き放つ”ことがミッションだという。同社は以前からリモートワーク/テレワークを活用していたが、今回の新型コロナウイルス感染症の流行によって同社自身の働き方も変わり、「5000人の従業員が5000カ所の異なる作業場所(自宅)から働くようになった」という。

Atlassianの概要
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 こうした経験を踏まえ、同社では「チームメンバーがどこにいても働ける新しい働き方」として“Team Anywhere”というコンセプトの追求を始めたという。ここで同社が重視しているのは、「働く人に選択肢と柔軟性を提供する」ことで、オフィスでも自宅でもシェアオフィス/コワーキングスペースでも、どこでも好きな場所で働くことができるようにすることが重要だという。その上で、今回の調査から得た「リモートワークのエクスペリエンスに影響を与える3要素」が明らかになったと同氏は指摘した。

 具体的には、「世帯の状況」「役割」「ネットワークの質」になる。世帯の状況は子供がいる/家が狭いなどの状況、役割は一人でできる仕事なのかチームのメンバーとの協働が必要なのかなどの業務の内容、そしてネットワークは物理的な回線品質のことではなく社会的なつながりを意味している。

同社が見出した、リモートワークの“エクスペリエンス”に影響を与える3要素。必ずしも企業が改善できるものばかりではないが、そうしたもの全てが働く人の満足度に影響を与えている、という視点を持つことは重要だろう
同社が見出した、リモートワークの“エクスペリエンス”に影響を与える3要素。必ずしも企業が改善できるものばかりではないが、そうしたもの全てが働く人の満足度に影響を与えている、という視点を持つことは重要だろう

 従来、日本では回線速度やセキュリティなど、主にシステム面での対応に注目が集まっており、個々の家庭の事情などは「個人的な事情」と考える傾向が強かったように思われるが、こうした事情全てが総合的に「エクスペリエンス」に影響すると理解すべきだという同社の主張には説得力がある。

 また同氏は、調査対象国ごとの「お国柄の違い」にも言及した。ドイツでは「勤務時間に柔軟性がある」との回答が63%(グローバル:50%)に達し、フランスでは「リモートワークに問題はなかった」との回答が36%(同:53%)にとどまるなどの差が見られるという。また、米国は現時点で世界でも最も感染被害の深刻な国の1つとなってしまっていることを反映してか、67%が「オフィスに戻ることを不安に感じる」と回答(同:53%)しているという。

調査結果のグローバル比較。「企業のリーダーシップ」「ワークライフバランス」「チームワーク」の3つについて、それぞれ満足度(数字が大きい方が満足度が高い)を比較したもの。日本は3要素全てで最低レベルで、グローバル平均を大きく下回っている
調査結果のグローバル比較。「企業のリーダーシップ」「ワークライフバランス」「チームワーク」の3つについて、それぞれ満足度(数字が大きい方が満足度が高い)を比較したもの。日本は3要素全てで最低レベルで、グローバル平均を大きく下回っている

 続いて、日本法人であるアトラシアン 代表取締役社長のStuart Harrington氏が日本の状況について説明した。今回の調査対象国間の比較では、日本のリモートワークに対する満足度は極めて低く、結果として日本では「感染拡大という制約の中で自宅で効率的に仕事をすることは難しい」との回答が44%(グローバル:27%)に達している。

 この背景として同氏は、「感染拡大以前にリモートワークをほとんど経験したことがなかった」との回答が、グローバル平均で43%なのに対して日本では51%に達することを指摘し、「日本ではリモートワークの経験知が極めて低い、あるいはゼロだった」ことがこうしたリモートワークに対する低評価につながっているのではないかと語った。

 さらに、対策として同氏は「デジタル化の推進」「仕事の進め方そのものを見直す」「オフィスに出勤すること自体や長時間労働を評価する企業文化から効率重視への転換を図る」などの改革の必要性を強調。同社の「Jira Software」や「Confuluence」といったソリューションを有効に活用してチームワークの強化に取り組んでほしいとの期待を述べた。

日本のリモートワークの課題と考えられる4つの要素。これらを改善していくことが重要となる
日本のリモートワークの課題と考えられる4つの要素。これらを改善していくことが重要となる

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