3Dプリントや付加製造(AM)を手がける企業の間で規模の拡大や、資本増強、再編が多く見受けられるようになっている。これには相応の理由がある。同分野は急成長を遂げようとしているのだ。
3Dプリントシステムの設計/開発/販売を手掛けるDesktop Metalの最高経営責任者(CEO)Ric Fulop氏は、「世界的に見た場合、製造市場の規模は12兆ドル(約1280兆円)であり、AMは2020年末時点で120億ドル(約1兆2800億円)を占めていた。つまりAMの浸透率は0.1%となっている。こうした状況は、1970年代初頭の半導体市場と類似している」と述べている。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックという状況において、AMはサプライチェーンで大きな役割を果たしており、3Dプリントはさらに大きな影響を及ぼした可能性も考えられる。各国が製造を自国内に引き留め、雇用を伸ばし、環境への影響を軽減しようとした場合、3Dプリントの規模拡大は必須となるはずだ。
グラフを見ると、投資家らもAMの可能性に着目しつつあることが分かるはずだ。
3Dプリント企業による規模拡大の取り組みも増えてきている。以下がその例だ。
- 3Dプリンターの開発を手掛けるMarkforgedは、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じてニューヨーク証券取引所に上場すると発表している。同社は、金属やカーボンファイバーを対象とする統合AMプラットフォーム「Digital Forge」を有しており、これまでに1000万個以上のパーツをプリントしている。
- Desktop MetalはMarkforgedに先立ち、SPACを通じたニューヨーク証券取引所への上場に成功している。Desktop MetalのFulop氏は「Additive Manufacturing 2.0」に注力しており、同社はバイオファブリケーションの技術を擁するEnvisionTECを2月に3億ドル(約320億円)で買収している。
- 3Dプリント業界に先陣を切って参入した企業の中で先頭を走っているStratasysは最近、新興企業Originを1億ドル(約110億円)で買収している。またStratasysは普及の拡大を目指し、同社の「F123」シリーズをカーボンファイバーに対応させた。
- 3Dプリンター関連の製造/販売を手掛ける3D Systemsは、事業再編によってヘルスケア市場や産業市場に注力するようになっており、バイオプリンティングに進出するとともに、アドバンストマニュファクチャリング(先進製造)および素材開発を目的とする研究所を開設している。また同社は、Raytheon Technologiesと米戦闘能力開発本部(CCDC)陸軍研究所(ARL)による新規プロジェクトの参加企業に選定されている。さらに同社は、自動車業界と航空宇宙業界を対象とした新システムを披露している。同社は新たなマネジメントチームを編成し、業績の改善も図ったため、今後はより積極的な動きに出るとも考えられる。
- 3Dプリントシステムの開発/製造を手掛けるFormlabsは、歯科や製造、エンジニアリング向けの新たな材料を投入し、特定業界に的を絞った戦略を強化している。またFormlabsは「CES 2021」で、同社の3Dプリンターによるコンシューマー向け製品のカスタマイズ性をアピールした。さらに同社は「Fuse 1」システムを発売している。
- HP Inc.も、エコシステムの強化や、材料関連の提携、APIの拡張を通じて製造業者から製品までのワークフローをつなごうとしている。同社は豊富な資金力を有しているが、より規模の小さな競合企業の多くもSPACを通じて資金を確保しているという事実がある。
端的に言うと、3DプリントやADは2021年に目が離せないテクノロジー業界の1つとなっている。競合企業はいずれも、デジタル化が進んでいく製造分野のルネッサンスに熱いまなざしを注いでいる。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。