「クラウドで可能性の限界を押し上げる」--AWSが公共分野の取り組み紹介

大場みのり (編集部)

2021-04-19 11:35

(編集部より:AWSの登壇者の肩書はイベント当時のもので、先日Teresa Carlson氏は退任し、4月19日付けでMax Peterson氏がCarlson氏の後任としてワールドワイドパブリックセクター部門 バイスプレジデントに就任しました。)

 Amazon Web Services(AWS)は米国時間4月15日、公共分野における同社の取り組みや顧客事例を紹介するグローバルイベント「AWS Public Sector Summit 2021」を開催した。これに伴い、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は4月16日、同イベントの基調講演を配信した。

 冒頭で、AWS ワールドワイドパブリックセクター/インダストリー部門 バイスプレジデントのTeresa Carlson氏は「公共分野の皆さんは、手持ちのリソースをはるかに超える使命を果たすことが求められる。そしてわれわれは、AWSクラウドをイノベーティブに活用して成果を出すあなた方の姿に感銘を受けている。皆さんが使命を果たすまで、われわれも止まることはない」と語った。

AWS ワールドワイドパブリックセクター/インダストリー部門 バイスプレジデントのTeresa Carlson氏
AWS ワールドワイドパブリックセクター/インダストリー部門 バイスプレジデントのTeresa Carlson氏

 続いて、インターナショナルセールス担当 バイスプレジデントのMax Peterson氏が「AWS Diagnostic Development Initiative」(AWS診断開発イニシアチブ)を説明した。各国が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査の規模拡大に取り組む中、AWSは2020年4月、AWS診断開発イニシアチブを立ち上げた。同プログラムでは、正確で優れた診断方法の迅速な市場投入を目指す顧客をグローバルで支援し、同様の課題に取り組む組織間の連携も促進している。

 AWSはこのプログラムの第1段階として、17カ国・87団体に上る企業、非営利団体、研究機関などを支援した。抗体、抗原、核酸といった分子検査、画像診断、ウェアラブル端末、AI(人工知能)やML(機械学習)を活用してウイルスを検知するデータ分析ツールなど、さまざまな診断プロジェクトを後押ししたという。

 2021年に第2段階へ移行する中で、同社はAWS診断開発イニシアチブの範囲を拡大する。具体的には、「個人やコミュニティーレベルでの発生を特定するための早期疾患検出」「疾患の痕跡をより深く理解するための予後診断」「世界的なウイルスゲノム解析を強化するための公衆衛生ゲノミクス」に取り組む。

 顧客事例の一つに、スタンフォード大学医学部によるスマートウォッチを活用した診断用アラームシステムの開発がある。同大学医学部ヘルスケアイノベーションラボの研究者らは、ユーザーの体が新型コロナウイルスと闘っている兆候を捉えて通知するスマートウォッチアプリを開発した。

スタンフォード大学医学部が開発したスマートウォッチアプリ
スタンフォード大学医学部が開発したスマートウォッチアプリ

 同アプリには、ユーザーの安静時の心拍数と歩数の変化を検出するアルゴリズムが搭載されている。パイロット試験では、感染したユーザーが症状を自覚する10日前に警告を発することなどができ、初期段階で良好な試験結果が出たとしている。

 同アプリは次の研究段階に入っており、スタンフォード大学のチームは感染した兆候をより早く検出できるようにするため、1000万人を目標に試験の参加者を募集している。この診断用アラームシステムは、AWSクラウドの活用を支援する「AWS プロフェッショナルサービス」のチームがデータ処理パイプラインの開発を手助けし、同クラウド上に構築された。

 同イベントには、スタンフォード大学医学部 遺伝学分野教授 兼 学科長のMichael Snyder博士もリモートで登場した。Snyder博士は「COVID-19がまん延してすぐ、われわれは発症前の感染の追跡能力を向上させる必要があると気付いた。スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスは、世界人口の60%近くの人々に使われており、心拍数や睡眠、体温など体内のさまざまな動きを計測している。こうしたテクノロジーを活用できると考え、このアプリを開発した」と説明した。

 「われわれは2017年からウェアラブルデバイスを用いて、ライム病や呼吸器系の病気を検知する力を証明してきた。そしてパンデミックの中、AWSクラウドを活用してこの研究の規模を大きくすることができた。第2段階では、アルゴリズムを改良し、精度を70%以上にすることを目指している。今後は、世界中の研究者がアクセスできるよう、デバイスのデータとわれわれのゲノミクスデータを統合するデータレイクを設置する。われわれは、AWSクラウドを用いて可能性の限界を押し上げることに貢献できることを楽しみにしている」(Snyder博士)

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