SAPジャパンが「インダストリー4.0」のノウハウを活用して日本の製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する活動を進めている。同社にはインダストリー4.0と「日本のものづくり」の架け橋になることを期待したい。
インダストリー4.0を活用して日本の製造業のDXを推進
SAPジャパンはこのほど、日本の製造業を対象にインダストリー4.0化戦略の具現化を進めるためのサービスである「Industry 4.Now(インダストリー・フォードットナウ)推進サービス」の提供を開始した。
インダストリー4.0はもはや説明の必要もないだろうが、SAPに関連した形で言うと、同社が本社を置くドイツが産官学連携で進める国家プロジェクトで、製造業のDXを推進する取り組みのことだ。SAPはそれを主導する企業の代表格である。
同社の日本法人であるSAPジャパンは2020年9月に、インダストリー4.0化戦略の具現化を支援するグローバル組織として「Industry 4.Now HUB TOKYO」を設立した。同組織はインダストリー4.0化に向けたPoC(概念実証)後の拡大展開戦略が描けていなかったり、その取り組みが組織的にもシステム的にも製造現場に閉ざされて情報が分断されていたりする日本企業の課題を踏まえ、それらを解消することを目的に設立された。
Industry 4.Now HUB TOKYOによる支援を通じて、顧客企業自身がインダストリー4.0化戦略によって目指すべき最終形のイメージは見えてきたものの、「何から手をつければよいか分からない」「現場や部門によってインダストリー4.0の捉え方が異なる」「各現場でシステムが異なる」など、その戦略を前進させる上での課題も顕在化してきた(図1)。
図1:Industry 4.Now HUB TOKYOの役割(出典:SAPジャパン)
今回、提供を開始したIndustry 4.Now推進サービスは、インダストリー4.0化戦略によって目指すべき最終形のイメージに最短距離で近づくための計画を具体化し、実装して活用し続ける道のりを、SAPジャパンが顧客企業に伴走して支援するものだという。
今回の新サービスおよびIndustry 4.Now HUB TOKYOの活動に関する内容については関連記事をご覧いただくとして、筆者はこの発表会見での説明を聞いて興味深く感じた点があった。
それは、同社のこうした取り組みによって、インダストリー4.0と日本のものづくりの良さが交わり、新たな“化学反応”が起きるのではないかということだ。日本の製造業は品質の高さやそれに基づくユーザーエクスペリエンス(筆者訳:利用者の感動体験)には定評がある。それが、ひいてはグローバルでのものづくりに反映されるならば、まさしく画期的なことである。